『サはサイエンスのサ』(鹿野司

 サイエンスライター鹿野司さんがSFマガジンに連載してきた科学コラムをまとめて加筆した一冊です。クローン技術から心理の働き、地球温暖化日本国憲法の攻撃的な使い方まで全編目ウロコの連続。冷静な筆致とSFマインドならではの新鮮な視点からの内容が非常に刺激的で心地よいです。表紙を描いているとり・みきさんはこう紹介されています「鹿野君は僕が『どうも報道も世間の趨勢も感情的な流れになっているけど、これってホント?』と疑問を感じたとき、いちばん納得できる情報や理性的な物の見方を示してくれる貴重な書き手&友人。文章もわかりやすくて面白いよ」。どうも発行部数は多くない気配ですが、もっと読まれてもいい本じゃないかなぁ。そんなわけでお勧めです。マスト読むべし。

『ルポ 資源大陸アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄』(白戸圭一)

 アフリカに駐在した毎日新聞の記者が、アフリカの現場について自らの体験を交えて解説した一冊。最近アフリカ関連のルポルタージュは興味深いものがちょくちょく見受けられまして、これも読み応えがありました。今のブラックアフリカ、実はかなりの経済成長を遂げつつあるのです。しかし一方で貧富の差の拡大・国土の汚染・いびつな開発などから急激に裏社会や犯罪組織、武装勢力が勢力を伸ばしつつあります。国境を超えて(その一端は日本にも届いています)、ときに最新技術を使いこなすその姿はアフリカの犯罪者という先入観を打ち破ってくれました。ソマリアモガディシオに携帯電話会社があって、しかも他国でもサービスを開始しているというのは驚き。あとナイロビから一応定期便も飛んでいるのね……。

『日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか』(小谷賢)

 旧日本軍と日本政府がいかに情報分析を生かすという点で問題があったのか、そしてそれが現代にも続いているかということを解説した一冊。日本軍(特に陸軍)が情報収集では存外がんばっていたことが興味深かったですよ。

『十九世紀ロシア農村司祭の生活』(I.S.ベーリュスチン)

 帯に曰く「本書は、十九世紀ロシア正教会の司祭が自ら筆をとり、当時の農村における聖職者の貧窮、家庭生活の不幸、精神的堕落、神学校や教会内部での賄賂のやりとり、聖職売買、聖職者や農民らの飲酒の習慣、高位聖職者たちの飽くなき権力欲と物欲、神学校の実態などを生々しく描きだしたきわめて珍しい記録である」。こんな面白そうな本を見逃していたとは! これから読みます楽しみ楽しみ。

ソ・ラ・ノ・ヲ・ト

 相変わらずぐぬぬと歯噛みしながら観ております。きっと中盤からは泣かせる展開になるんだろうなーとか思ってますよ。OPでクリムトを持ってきておいて単にゆるいアニメなつもりもあるまい! 泣かせ方もきっと小賢しくあざといやり口に決まっているのだ! と一人ボルテージが上がっているのです。しかし昔のアニメみたいにじっくり腰を据えてエピソードを掘ることもできないわけで、原作なしのオリジナルで1クールだと味付け濃い目といいましょうかあざとさといいましょうか、そういうのは必然なんだろうなとも感じます。大変だなーいや他人事ではありません。

サはサイエンスのサ

サはサイエンスのサ

ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄

ルポ資源大陸アフリカ―暴力が結ぶ貧困と繁栄

日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ)

日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ)

十九世紀ロシア農村司祭の生活―付・近代ロシアの国家と教会

十九世紀ロシア農村司祭の生活―付・近代ロシアの国家と教会