ソ・ラ・ノ・ヲ・ト

 相変わらず僕の近親憎悪と嫉妬エンジンをグルグル回してくれるアニメです。小賢しい! 実に小賢しい! 「アメージング・グレイス」を使ってくるあたり小賢しさの極みです! ……この小賢しいという評価はプラスマイナス表裏一体の感想でもありまして、程よい手綱のゆるめ方をしてやがんなぁプロの仕事だという意味合いを含んでいます。僕なら調子に乗ってソ連戦時歌謡「ゼムリャンカ」を使いかねないところですが、それでは置いてけぼりになってしまう人が多いでしょう。作品中にツッコミたくなる点は多々あれど、その大半は制作側の意図するところだと思うのですね。そこに怒るのはいかにも無粋。牛丼屋に入って牛丼が出てくると怒るのは愚の骨頂。それで収まらない憤懣は自分でがんばるしかありません。しかしまぁ、効果的に僕をチクチク刺激してくれるアニメです。DVDを買えばいい燃料になる……と思いましたが、それは作品に対して不誠実だし失礼だなぁ。

『ドレスを着た電信士 マ・カイリー』(松田裕之)

 ああなんと爽快痛快面白い本であったことか! 20世紀初頭のアメリカ、電鍵の腕ひとつで国土をさすらい運命を切り開いていった女性電信士の一代記です。女性の社会的地位がきわめて低かった時代、電信士は女性が就くことのできる数少ない職業でした。マ・カイリーことマッティ・コリンズ・クーンはアイリッシュの血を引くテキサス育ち。著者がたびたび引用している彼女の自伝もスラングが多用されておリ、きっぷが良くタフな姐さんといった風情です(著者は「侠」であると書いています)。彼女は身ひとつで生きていくため独学で電信技術を身につけ(当時の電信士は徒弟制のようなもので独学の者が多かったのですが)、一流の電信士として働くようになります。といってもその生活は日々流転、鉄道の停車場に併設された電信局をさすらう人生を送るのでした。昂然と誇り高いマ・カイリーの生きざまもさることながら、19世紀から20世紀にかけての電信事情や電信士の文化も紹介されているのが実に興味深いところ。鉄道電信士の組合員は鉄道の無料パスを使えるとか電信技術は秘術であって非組合員に漏らしてはならないとか、他の作品で使いたくなるネタではないですか。「ウィザード・オブ・ワイヤー」「ナイツ・オブ・ザ・キー」「ブラス・パウンダー(真鍮叩き)」といった当時の言葉もしびれます。著者の言葉ですが「電鍵無宿」というのも実にいい! とにかくお勧めです。マスト読むべき。

『サはサイエンスのサ』(鹿野司

『ぽすから』1巻(中村哲也

 主人公の白樹くんがいちばん色っぽいような気がします!

ドレスを着た電信士マ・カイリー

ドレスを着た電信士マ・カイリー

サはサイエンスのサ

サはサイエンスのサ

ぽすから (1) (まんがタイムKRコミックス)

ぽすから (1) (まんがタイムKRコミックス)