『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ)

 第二次大戦でソ連軍に従軍した女性たちのインタビュー集です。その内容から、ペレストロイカ以前は検閲で差し止められていたという一冊。赤裸々な陰惨さ、驚くべき英雄的行為と無邪気さ(そんななかにふと萌えてしまうような微笑ましい一瞬があるのがタチ悪いといいましょうか)。他国と違い、ソ連では女性兵士が最前線で戦いました。歩兵、狙撃兵、衛生兵、パイロット、戦車兵、通信兵、パルチザン。志願が受け入れられず隠れてまで前線部隊に身を投じた者、男物の下着しか支給されなかったことを気に病む者、瀕死の将校から乳房を見せてくれと頼まれたこと……。彼女たちがどのような体験をしたのか、それをどのように記憶し、どのように考えているのかをうかがい知る事が出来る大変に貴重な、本当に重たい記録です。また、男の兵士たちが女性兵士をどのように見ていたかという証言も収められていて、「仲間ではあるが妻にはしない」という言葉が印象的でした。しかし、この証言の数々もネタ元にしてしまうんだろうなぁと思うとちょっと気が重くなりますね。

戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない