井村屋のアップルパイバー美味し

人間ドックへ行ってきました。何事もありませぬように、南無南無。
COVID-19ワクチンの7回目も打ったし、流行っているインフルエンザのワクチンもはやいところ打ちたい。

「現実がフィクションよりムチャクチャで困る」という言い回しがあります。漫画家や作家もよく使います。僕もご多分に漏れず。あれは半分ぐらい本気で、つまり半分は本音ではありません。
 巨大で始まりも終わりもなくぐにゃぐにゃした現実なるものをエイヤと切り取り、盛ったり色をつけたりこねくりまわして別のものにするのが虚構です。同じ土俵で戦うものではないのです。土俵の横っちょから卑怯にも急所や足を狙うものです。
「現実には勝てない」と本気で口にする虚構屋がいるとすれば、それは現実相手に魂をかけて切り結びくたびれ果てた末のことでしょう。いやーまだまだ負けやしませんよ勝てますよ。

さて単行本『スターリングラードの凶賊』1巻が出ました!
第二次大戦さなかの1942年、独ソ戦の象徴となったスターリングラードの戦いを舞台にした東部戦線ウエスタン。戦争という巨大な不条理に悪党や無法者にならず者の手前勝手が通用するのか。果たして!

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去年が連載の谷間で出せなかったので2年ぶりの単行本になります。しばらくぶりなものですから予想以上にドキドキしました。忘れられてやせぬだろうかという不安ってあるのですよ。しかも新作。幸い読者の皆様からはご好評頂いているようで、本当にありがたいことです嬉しいです。もっとも好評ばかりでは駄目でして、好みに合わなかった人にも届いてナンボなのですね。そういう方には申し訳ないけれど、多くの人に読んでもらえますように。面白いから!

こちらで1話をまるまる読むことができます。ピンときたら是非お買い求めください。

natalie.mu

あと何回食べられるか冷やし中華

そして夏が終わった
まるで夏などなかったかのように
陽だまりは温かい
ただそれだけでは足りない

 温かいというには今週末の最高気温が34度などと予報が出ていますが。

 「楽園 Le Paradis」で連載中の東部戦線ウエスタン『スターリングラードの凶賊』1巻が9月29日発売です。去年は連載の谷間で単行本が出せなかったのでしばらくぶりですよ。よろしくよろしく!

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 父が亡くなりました。

 昭和ひとケタ上海育ち、終戦時には旧制中学の生徒で戦車への肉迫攻撃訓練を日々やらされていたとか、そういう世代です。大往生でありましょう。そろそろであるなと覚悟はしていたので驚きはありません。

 人付き合い下手。規範にそぐわない性格なのに生真面目で規範を重んじる。ストレス発散下手。個人としての権威を認めないくせに権威主義者。雑学的しきたり好き。耳学問の帝王。知らないと答えることが嫌いで知ったかぶりを多用する。他人のために何かをするのが好きだが往々にして見当はずれであり、相手がそれを望んでいるかどうかは頓着しない。会話では相手の発言の否定から入りがち。使わないカメラや呑まない酒を大量に持っている。

 列挙してみればそんなに珍しい性格ではないというか、オタクには馴染み深いタイプな気がします。じっさいミリタリーオタクであり、僕がこんな趣味になった入り口は父の蔵書を勝手に読んでいたからでした。しかも自分の性格がかなり父に似ているとわかってきて微妙な気持ちになることも多々……。

 とはいえ父と胸襟を開いて会話をした覚えがあまりないのです。常に知識や社会的地位といったロールでよろっていた印象かな。
我慢を重ね不満なことは多く、しかし身勝手なことも多かった。こう書いてみるとやはり人間そんなものだなと思えてきます。一人で本を読んだりカメラのことを考えているときがいちばん幸せだったのではなかろうか。

 子供の頃の印象ではおっかない親父だったし、身近すぎて欠点を知りすぎているものだから尊敬しているかどうかといえば首をひねります。
 とはいえこんな不器用なおっさんでも家庭を持ち、3人の子供を育てたのは立派過ぎるほど立派なこと。これは不器用な人類に対する希望でもあります。僕には真似できぬ。本来は強い人ではなかったろうに、晩年はアルツハイマー認知症とも勇敢に戦いました。本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

 そうそう、東日本大震災直後で原発から漏れた放射線が東京へと流れてきた頃、突然父から京都へ戻らなくて良いのかと電話があって驚いたものです。後にも先にもあんなことは無かった。よほどに心配だったのでしょうねえ。

 葬儀だなんだでバタバタしてスケジュールが取られたものだから、来週予定していた北海道旅行をキャンセルしたぞ。おのれおのれー。

井村屋のクラフトコーラアイスバーがお気に入りです

 また間が開いてしまいました。しかも半年近く。
 Twitterがややこしい昨今、こちらの活性を上げないといかんですねえ。Threadsはブラウザ版がないとやりづらいのでやっていません。

 中年で雁首を揃えてシュラスコへ行ってきました。同行の皆はともかく、僕にとっては健康診断のようなものです。まだ戦えました。
 『君たちはどう生きるか』、あの歳にして新たなことに挑戦するのはすごい。前半までの眞人はとてもとても魅力的。美点や感心すること多々あり。でも、あるひとつの場面のため僕の評価は激怒と隣り合わせの困惑なのです。これで長編アニメの上がりは納得いかないのでまた作ってください監督。
 楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』がたいへん面白かったので皆さんにお勧めです。「ごはん×鉄道旅行×百合×植民地×オリエンタリズム批判」小説。楊双子はこれがはじめての邦訳だそうで、他の作品も読みたいな。

 お知らせいくつか。
・『楽園 Le Paradise』で連載中の東部戦線ウエスタン『スターリングラードの凶賊』の単行本1巻が9月に出ます。しばらくぶりの単行本です。また近々になりましたら詳細をお伝えしますね。
・8月10日、東京は新宿、ロフトプラスワンにて開催されるトークイベント「戦争漫画無駄話」にお邪魔します。メンバーは新谷かおるさん、黒井緑さん、「楽園」の編集・飯田さんに僕と相成ります。チケット販売中で、配信もあります。よろしくよろしく。

www.loft-prj.co.jp


・まだちょっと先ですが、9月3日に東京ビッグサイトが会場のCOMITIAに参加します。F09b「ボストーク通信社」です。来てねー。
・夏コミは申し込んでいません。参加される皆様体調にはどうぞお気をつけて。
兵站事務屋将校右往左往漫画『大砲とスタンプ』の3巻までがkindleunlimitedに入りました。この機会にいかがでしょう。面白いよ!

 すこし前にロシアのウクライナ全面侵攻から500日が過ぎました。ロシア連邦はただちに撤兵して戦争をやめるべきであり、戦争犯罪人は裁かれねばならず、プーチンは大統領の座から追われねばならない。

 ウクライナは即時停戦すべきだという意見があります。クレムリンに融和的だったり、ましてや反米が目的化したような人の主張には到底賛同できないのですが、戦中世代が口にする即時停戦論には真摯に向き合わざるをを得ません。戦争の惨禍を身に沁みて覚えている人たちの「戦争はこりごりだ」という感情は魂から出ていて、戦時を知らない世代が邪険に扱うのは不遜というものです。

 僕はウクライナの抵抗を支持するのだけど、その根拠として「ウクライナ人が抵抗しているから」一点に依って立つことにも抵抗があります。悲惨な戦争を肯定する理由を他人に押し付けるのは、どこかずるい。やや古い数字ですが、去年の年末で約8割のウクライナ人が抗戦を支持していたそうです。では残りの2割は無視して良いのか。一刻も早く戦争をやめてほしいというウクライナ人がそれなりにいるのも当然のことです。

 大きな義性を払いながら抵抗を続けるウクライナ人にいくら敬意を払っても過ぎることはありません。しかしロシアの侵略戦争を許さない理由は僕個人の主体性に置きたい。

 

365日の愚行

 ロシアのウクライナへの大規模侵攻から始まった戦争が今日で1年。

 ロシア連邦はただちに撤兵して戦争をやめるべきであり、手をくだした・命令した戦争犯罪人は裁かれねばならず、プーチンは大統領の座から追われねばならない。ウクライナの人々とロシアの抵抗者に支援を。

 小泉悠さんの予測では停戦まで3年かかるとのことで、これは予言ではないにせよ憂鬱な説得力があります。膨大な死傷者と破壊が続き、しかもどのような終わり方をするかわからない。終わったあとも困難が長く続くのが戦争です。
 ロシアの体制と軍をあなどるべきではありません。失敗から学ぶことができる有能な人物が多数おり、不器用な組織を目的のためなら多少乱暴でもマネジメントする伝統があります。戦闘でウクライナに勝つことも充分あり得るでしょう。しかし戦争には勝てますまい。
 プーチン権力の魔法を解き、平和とロシアの名誉を取り戻すいちばんの力を持っているのはロシア国民で、期待もしています。現実問題として近々事態が動くことは望み薄なのも理解していますが、信じるべきなのです。

 自分のことになると、この戦争といまのロシアについてどう捉えるべきなのか、1年経っても悩むことばかりです。かの地に住む人々ではなく、真剣に向き合ってきた研究者でもない無責任なオタクでしかないけれど、30年以上見てきたロシアなるものは一体なんだったのか。オタク風情がわかった気になるのはそんなのわかっている筈がありませんので、暫定的な答えを出し続けるしかありません。

 自分にできることとして、国連UNHCR協会とロシアにおける政治的被迫害者を支援するグループOVD-infoへの支援は続けています。

https://www.japanforunhcr.org/campaign/ukraine

OVD-Info: stop political persecutions in Russia - GlobalGiving

先週行った南伊豆は完全に春でした

 どの口で更新頻度上げたいと。あけましておめでとうございます。

 2月というのは真冬ではなく、早春に足を突っ込んでいるのですねえ。僕は寒いのが大好きなので、ぼんやりしている間に冬が駆け足で去っていく様子に愕然としています。返せ戻せ。東京だと真冬でなくなったことに気づくのは気温もさることながら湿度かな。ここ何日か、加湿器を使っていません。さびしい……。

 お知らせがいろいろあります。
 遅くなりましたが冬コミで出した本『御機嫌如何』の通販を始めました。同人漫画詰め合わせ本です。めずらしく分厚いので、いつものラクガキ本に慣れた皆さんから驚きの声を多々頂いております。面白いですよよろしく!

boctokpress.booth.pm

 2月25、26日に東京は代官山 蔦屋書店で「サブカル市」というイベントが開催されます。そこで26日(日)にサイン会をすることになりました。閑古鳥だとしょんぼりするので来てね来てね。これで胸を張って僕もあなたもサブカルです。こちらから先行予約できます。

https://peatix.com/event/3503362

 また、4月始まりのサブカル市特製カレンダーに僕も描いています。参加しているメンバーが豪華で本当に僕が混ざっていいんでしょうか。

 2月末に発売の『楽園 Le Paradis』41号に東部戦線ウェスタン『スターリングラードの凶賊』4話が載ります。いわゆるスターリングラードの戦いが本格的に始まります。買ってね読んでね!

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 あれッ、前回から「ですます調」に戻ってますね。やはりこっちの方が性に合っているのかしらん。

■追記■
 松本零士が亡くなってしまった。享年85、大往生というべきでしょう。
 鳥の雛は最初に見たものを親と認識するといいます。僕にとっては松本零士がそうでした(正確に言えばその前に『のらくろ』へ接していたのだけど、さすがに現代のものではないという意識はあり……)。
 親戚の家で出会った戦場まんがシリーズからの刷り込みは言葉に表わすことができません。衝撃、ではなくごく自然に親と思ったようなものです。漫画とはあれでした。小学生の頃、日々描き飛ばしていた漫画は戦場まんがシリーズから直結していたなにかでした。嫌な小学生だね。セックスの場面とかなんのことやらわからなかったなあ。わからないネタは多くとも、ちゃんと面白い漫画はちゃんと面白い。この感覚は僕に強い影響を与えています。
 その後出会った『銀河鉄道999』は今でも少年冒険漫画として常に意識しているし、『ガンフロンティア』は娯楽漫画描くあるべしのお手本だし(松本零士名物の巻き紙モノローグはこの作品が最高峰だ)、鬱屈したとき『男おいどん』『聖凡人伝』は常に精一杯横にいてくれる。挿絵もノースウェスト・スミスの世界は僕の一部だ。呑み、喰い、撃ったり斬ったりし、メカが活躍したり壊れたりし、どんどん脱ぎ、どんどん死ぬ。虚無感や寂しさが躁的な花も嵐も踏み越えて主義と同居する。

 90年代以降の迷走ぶりは相当に厳しくてついていくことができなかったのも事実で、後半生の諸々も誰かしっかり論評してもらいたいものです(大雑把にはご自身の情念に呑まれてしまったのだと思うのだけど)。しかし松本零士は煮えたぎる情念、偉大なるド天然の人であり、ド天然でなければあの数々のドラマやセリフは出てこないのでしょう。偉大なる漫画家は偉大なる真ッ当な人ではない。

 松本零士がいなければ僕は漫画を描いていません。本当にありがとうございました。

温泉行きたい

 間が空いてしまいました。気がつけば大晦日ですよ。コミケに出かける朝、これを打っています。Twitterもなんだかややこしいことになっているし、更新頻度上げたいですね。

 ロシア連邦はただちに撤兵して戦争をやめるべきであり、手をくだした・命令した戦争犯罪人は裁かれねばならず、プーチンは大統領の座から追われねばならない。ウクライナの人々とロシアの抵抗者に支援を。

 この戦争、未だに悪い夢ではないかと思ってしまいます。どうなるのかなあ。
 クレムリンはこの戦争がロシアの存続にかかわるという評価のようですが、実際転がり方によってはロシア連邦の解体はあり得ると思っています。もっとも、それはプーチンのせいなのだけど。現ロシア国家の解体が総じてポジティブなものになるか、大いなる悲劇になるか、はたして。
 日本のウクライナへの支援がまだまだ少ないことについては不満ですね。首相や政府の幹部はキエフ訪問もしていませんよ。

 ウクライナとロシアに限らず、日本についても憂鬱なことが多いことです。来年は少しでも良いことがありますよう。でも良いことは待ってても降ってこないし、一人では本当に本当に微力とはいえ世の中を良くするために助太刀するべきなのでしょう。

 今年は連載の谷間ということもあって、しばらくぶりに単行本が出ない年でした。モーニング・ツーの新連載は鋭意準備中ですので、来年の早いうちには披露しますよ。
 そうそう、2月9日に岡山大学にてロシア・スラヴ文学研究者の越野剛先生をお相手に(そして司会が本田晃子先生です)「マンガから見るロシアの戦争」と題したトークイベントへ出ることになりました。おそるべきことです。無料、予約不要なのでお近くの方は是非おいでください。

www.let.okayama-u.ac.jp


 楽園web増刊の「主君と旅する幾つかの心得」2話、まだしばらく無料公開中ですのでこちらも観てね。

hakusensha.tameshiyo.me


 いろいろ書こうかと思ったけど、まあよいでしょう。あ、2022年の映画ベストは文句なく『ドンバス』でした。暗黒の不思議惑星キン・ザ・ザ。それに順不同で『オフィサー・アンド・スパイ』『戦争と女の顔』『ブレット・トレイン』『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』が続きます。
 あッあッ、大事なことがありました。この秋に出たキャサリン・アーデン『熊と小夜鳴鳥 冬の王1』(創元推理文庫)をイチオシ中です。14世紀が舞台の、ド直球中世ルーシ・ファンタジー。作者はロシア史やその文化に造詣の深い方とみえて、始終ニヤニヤしっぱなしでした。もちろん設定にとどまらず、物語や登場人物もたいへんに魅力的。人ならざるものがまだ人とともに暮らしていた時代、モスクワ大公国激動の時代。ラドネジの聖セルギイが登場するというだけでテンション上がるのですがこれでテンション上がる人は少数派なのは自覚しております。あと馬がお好きな方もぜひ。来年春には二作目が邦訳されるそうで、待ちきれません。

www.tsogen.co.jp




 ではでは、皆様良いお年をお迎えください。本当に、本当に!

節制向けの季節も終わり

 いよいよ秋ということで、2022年最後かもしれない冷麺を頂いた。一期一会。

 ロシア連邦はただちに撤兵して戦争をやめるべきであり、手をくだした・命令した戦争犯罪人は裁かれねばならず、プーチンは大統領の座から追われねばならない。ウクライナの人々とロシアの抵抗者に支援を。

 ロシアでは部分動員なのだかなんだかわからない動員が始まっている。クレムリンが勝つことはないだろうが、苦しみを長引かせることはできる。ことと次第によっては核兵器も使われかねない。この動員がプーチン失脚の呼び水になるかもしれないし、プーチン後により良い体制ができるとも限らない。そうしているうちにも犠牲者は増え続けるわけで、良い選択肢がないというのは憂鬱なものだ。

 なにが起きているのかある程度判明するのは数年、10年後になるだろう。専門家ならいざしらず、こちらは素人だ。SNSの速度で一喜一憂したり、わかったつもりにはならぬようにしたい。
 それより国連高等難民弁務官事務所UNHCR、ロシアでの政治的被迫害者を支援するグループ(動員が始まった今ますます必要とされる組織だ)OVD-Info国境なき医師団への寄付はすぐにでもできるのだから引き続き。

 まったく意外ではないことに、ロシア人キャラクターを出す企画がポシャったり、ロシア人キャラがしれっと別の国出身に変わったり(『1984年』だ!)している模様。
 仕方ないとは断じて(断じて!)思わないが、一方でこの決断に関わった人たちを責める気分にもあまりなれない。国とそこに住む人々は違うし、ロシア国民の集団的な責任と個々人の責任を混同するのも筋違いだ。とは申せ、陰惨な戦争のことを考えるとロシア絡みの作品を素直に楽しめなくなった人は多かろう。「これこれこういう理由で筋違いなのだから好きになって楽しみなさい」とは無茶な話。感情は感情で、これについては仕方がない。
 僕の作品も今回の戦争で読めなくなった人はいると思う。ご縁があればまた読んでくださいね。

 ゴルバチョフ死去。彼がソ連の最高権力の座にあったのはたったの6年半。冷戦を終わらせ、ソ連を再生させようとした人。ロシアではたいそう評判が悪いけれど、ソ連解体については彼が「主犯」ではなかろう。時代を作り、時代に追い抜かれた人だ。60歳で過去の人になり、その後はなんだか迷走気味の人生でもあった。晩年のインタビュー番組での疲れ切った面持ちと、先立たれたライサ夫人の肖像の横にイコンが置かれていたのが印象に残っている。社会主義者は最後に信仰を持ったのだろうか? プーチンの戦争を目にして亡くなるのは幸福とはいえない。本当におつかれさまでした。
 僕が物心ついたときの書記長がブレジネフ。その後アンドロポフ、チェルネンコソ連の指導者といえばよぼよぼの老人で荘重で死にかけのイメージだった。そこへ来てさっさと歩き、はきはきと話し快活に笑うゴルビーが登場したのはとんでもなく鮮烈で、いまでもどこかソ連ぽくない気がする。スターリン時代のコルホーズで生まれ育ち、あの体制だからこそモスクワ大学に行けて、共産党でエリートコースを歩んできた文字通りのソ連の子なのだけど。

 前の記事にも書いたことだけど。
 安倍元首相の「国葬」、国葬のふりをした国葬儀というか、ともかく僕は反対だ。いかなる人の死も平等に悼むべきで、国が自ら誰かを特別扱いしてはいけない。私事なら別だ。差をつけて当たり前なのが人情だ。だが国は万人平等の理想のため非人情であるべきだった。国がその建前を率先して放り出すのはさすがに矜持がなさすぎやしないか。
 僕は共和主義者だが、天皇国葬になるのは百歩譲ってまだ許せる。日本国憲法で国民の統合の象徴だからだ。象徴としてのセレモニーだ。また、原則を破るぐらいの例外もあり得るだろう。よほどの英雄、誰もが認めざるをえない人物なら、あるいは。
 安倍さんがそうだろうか。
 吉田茂に次いで二人目で、今のところよほどの例外が政治家に限られているのもつまらない。

 ちょっと前、ドラマ『力の指輪』についてTwitterであれこれ話が盛り上がっていた。それ自体には言及しないが(なにせ観てないので……観なさいよ!)、ピーター・ジャクソンの映画でイメージができた人が多いのだなということにあらためてメジャー作品だと感心した次第で。
 僕の絵としての指輪のイメージは寺島龍一の挿絵がいちばん近い。これはわかりやすい刷り込みですね。あとトーヴェ・ヤンソンが描くホビットも好きだ。PJの映画は勿論圧倒されるし大好きだが、実はどんぴしゃりのイメージではない。なるほどなー、という距離を感じている。とてもよくできた二次創作な印象に近い。
 百点満点の絵に出会ってしまったら、もう漫画を描かなくなってしまうかもしれないのでこれで良いのだ。自分に無いものだからこそ面白いのかもしれない。そのうえで、ファンタジー……というと範囲が広すぎるから狭めて「剣と魔法の世界」で映画で、こうありたいなというイメージに近いのはなんだろう。テリー・ギリアムの『バロン』かな。あと『コナン・ザ・グレート』と『キング・オブ・デストロイヤー』……ただの老人かもしれぬ。

 イメージといえば。
 『サイバーパンク:エッジランナーズ』観た観た。正直なところ、いささか様式美にすぎるし自分ならこうするというところは多かった。ベタベタだ。だが! 「いかにも」で「そうそうこういうの」というサイバーパンクアニメは意外に無かったのではあるまいか。『ニューロマンサー』から38年を経て、真正面からベタベタを、いや、マスターピースを見せてくれた心意気。さあここからですよ。

 お知らせ。萌えミリ誌の雄「MC☆あくしず」66号が出ています。大河ロシア史連載「ロージナ年代記」は今回番外編でショートコミックを描きました。以前のショートコミックが好評だったので味をしめました。今後もときどきやる予定です。大砲と教会の鐘には意外なつながりがあるというお話。よろしく!

www.ikaros.jp

 来たる10月21日(金)夜、東京は新宿のロフトプラスワンにてトークイベント「戦争漫画無駄話」をやります。ご一緒するのは軍艦漫画のすごい人、黒井緑さんとロシア軍事研究でいちやく有名になった人、小泉悠さんです。チケット発売中。来てね来てね!

www.loft-prj.co.jp