節制向けの季節も終わり

 いよいよ秋ということで、2022年最後かもしれない冷麺を頂いた。一期一会。

 ロシア連邦はただちに撤兵して戦争をやめるべきであり、手をくだした・命令した戦争犯罪人は裁かれねばならず、プーチンは大統領の座から追われねばならない。ウクライナの人々とロシアの抵抗者に支援を。

 ロシアでは部分動員なのだかなんだかわからない動員が始まっている。クレムリンが勝つことはないだろうが、苦しみを長引かせることはできる。ことと次第によっては核兵器も使われかねない。この動員がプーチン失脚の呼び水になるかもしれないし、プーチン後により良い体制ができるとも限らない。そうしているうちにも犠牲者は増え続けるわけで、良い選択肢がないというのは憂鬱なものだ。

 なにが起きているのかある程度判明するのは数年、10年後になるだろう。専門家ならいざしらず、こちらは素人だ。SNSの速度で一喜一憂したり、わかったつもりにはならぬようにしたい。
 それより国連高等難民弁務官事務所UNHCR、ロシアでの政治的被迫害者を支援するグループ(動員が始まった今ますます必要とされる組織だ)OVD-Info国境なき医師団への寄付はすぐにでもできるのだから引き続き。

 まったく意外ではないことに、ロシア人キャラクターを出す企画がポシャったり、ロシア人キャラがしれっと別の国出身に変わったり(『1984年』だ!)している模様。
 仕方ないとは断じて(断じて!)思わないが、一方でこの決断に関わった人たちを責める気分にもあまりなれない。国とそこに住む人々は違うし、ロシア国民の集団的な責任と個々人の責任を混同するのも筋違いだ。とは申せ、陰惨な戦争のことを考えるとロシア絡みの作品を素直に楽しめなくなった人は多かろう。「これこれこういう理由で筋違いなのだから好きになって楽しみなさい」とは無茶な話。感情は感情で、これについては仕方がない。
 僕の作品も今回の戦争で読めなくなった人はいると思う。ご縁があればまた読んでくださいね。

 ゴルバチョフ死去。彼がソ連の最高権力の座にあったのはたったの6年半。冷戦を終わらせ、ソ連を再生させようとした人。ロシアではたいそう評判が悪いけれど、ソ連解体については彼が「主犯」ではなかろう。時代を作り、時代に追い抜かれた人だ。60歳で過去の人になり、その後はなんだか迷走気味の人生でもあった。晩年のインタビュー番組での疲れ切った面持ちと、先立たれたライサ夫人の肖像の横にイコンが置かれていたのが印象に残っている。社会主義者は最後に信仰を持ったのだろうか? プーチンの戦争を目にして亡くなるのは幸福とはいえない。本当におつかれさまでした。
 僕が物心ついたときの書記長がブレジネフ。その後アンドロポフ、チェルネンコソ連の指導者といえばよぼよぼの老人で荘重で死にかけのイメージだった。そこへ来てさっさと歩き、はきはきと話し快活に笑うゴルビーが登場したのはとんでもなく鮮烈で、いまでもどこかソ連ぽくない気がする。スターリン時代のコルホーズで生まれ育ち、あの体制だからこそモスクワ大学に行けて、共産党でエリートコースを歩んできた文字通りのソ連の子なのだけど。

 前の記事にも書いたことだけど。
 安倍元首相の「国葬」、国葬のふりをした国葬儀というか、ともかく僕は反対だ。いかなる人の死も平等に悼むべきで、国が自ら誰かを特別扱いしてはいけない。私事なら別だ。差をつけて当たり前なのが人情だ。だが国は万人平等の理想のため非人情であるべきだった。国がその建前を率先して放り出すのはさすがに矜持がなさすぎやしないか。
 僕は共和主義者だが、天皇国葬になるのは百歩譲ってまだ許せる。日本国憲法で国民の統合の象徴だからだ。象徴としてのセレモニーだ。また、原則を破るぐらいの例外もあり得るだろう。よほどの英雄、誰もが認めざるをえない人物なら、あるいは。
 安倍さんがそうだろうか。
 吉田茂に次いで二人目で、今のところよほどの例外が政治家に限られているのもつまらない。

 ちょっと前、ドラマ『力の指輪』についてTwitterであれこれ話が盛り上がっていた。それ自体には言及しないが(なにせ観てないので……観なさいよ!)、ピーター・ジャクソンの映画でイメージができた人が多いのだなということにあらためてメジャー作品だと感心した次第で。
 僕の絵としての指輪のイメージは寺島龍一の挿絵がいちばん近い。これはわかりやすい刷り込みですね。あとトーヴェ・ヤンソンが描くホビットも好きだ。PJの映画は勿論圧倒されるし大好きだが、実はどんぴしゃりのイメージではない。なるほどなー、という距離を感じている。とてもよくできた二次創作な印象に近い。
 百点満点の絵に出会ってしまったら、もう漫画を描かなくなってしまうかもしれないのでこれで良いのだ。自分に無いものだからこそ面白いのかもしれない。そのうえで、ファンタジー……というと範囲が広すぎるから狭めて「剣と魔法の世界」で映画で、こうありたいなというイメージに近いのはなんだろう。テリー・ギリアムの『バロン』かな。あと『コナン・ザ・グレート』と『キング・オブ・デストロイヤー』……ただの老人かもしれぬ。

 イメージといえば。
 『サイバーパンク:エッジランナーズ』観た観た。正直なところ、いささか様式美にすぎるし自分ならこうするというところは多かった。ベタベタだ。だが! 「いかにも」で「そうそうこういうの」というサイバーパンクアニメは意外に無かったのではあるまいか。『ニューロマンサー』から38年を経て、真正面からベタベタを、いや、マスターピースを見せてくれた心意気。さあここからですよ。

 お知らせ。萌えミリ誌の雄「MC☆あくしず」66号が出ています。大河ロシア史連載「ロージナ年代記」は今回番外編でショートコミックを描きました。以前のショートコミックが好評だったので味をしめました。今後もときどきやる予定です。大砲と教会の鐘には意外なつながりがあるというお話。よろしく!

www.ikaros.jp

 来たる10月21日(金)夜、東京は新宿のロフトプラスワンにてトークイベント「戦争漫画無駄話」をやります。ご一緒するのは軍艦漫画のすごい人、黒井緑さんとロシア軍事研究でいちやく有名になった人、小泉悠さんです。チケット発売中。来てね来てね!

www.loft-prj.co.jp