だ・である調を試してみる

 ロシア軍の戦争犯罪が次々に明らかになりつつあり、非常に厳しい。チェチェンやシリア、東ウクライナで組織的にやってきたのだから予測できたことだとはいえ、こうつきつけられると気が滅入る。この蛮行に対しきちんと追及して責任を取らせなければならない。
 しかし、これで「ロシア人は野蛮だ」と人種主義や憎悪に行くのはいかにも軽率だ。ましてや在日ロシア人を攻撃するのはもってのほか。人や社会は条件さえそろえばいくらでも野蛮になれる。ドイツのホロコーストアメリカの東京大空襲やソンミ村、イギリスのドレスデン空襲、なにより日本人も中国でなにをやってきたか。 ここで挙げた人々のほとんどが「普通の人」だったのと同様、ロシア人もほとんどは常識のある普通の人々だ。普通の人だからこそ虐殺するし略奪もする。ロシアの文化歴史から現代になってなぜあのような非道が生み出されたのか、相手への敬意を持ちつつ誠実に、甘えず調べて考えて……まださっぱりわからないが。そしてなによりロシア人たち自身がこの愚かさに対して否応なく向き合うことになろう。向き合える人たちだと信じている。
 「ロシアは蛮行をはたらいたのだから憎まれて当然だ」と「私はロシア人を憎む」の間には大きな距離がある。まさに蹂躙されているウクライナでは、致し方ないかもしれない。しかし日本ではどうか踏みとどまってほしい。

 RIAノーヴォスチにおそるべき記事が掲載されている。21世紀に正気で書いたとは信じがたいジェノサイドを煽る内容だが、政府の意に沿わない報道は許されないなか、国営通信社で配信された意味は大きい。うーん、これもロシアなのだ。

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 最近読んだマルレーヌ・ラリュエル『ファシズムとロシア』がとても勉強になった。ロシアを安易にファシズム国家と呼ぶことはプーチン体制の問題を見誤らないか、という疑問から入る本だ。ソ連時代からロシアの体制や社会がどのようにファシズムを評価してきたかはまったく知らなかったし、山のようなロシアの右翼について眺めているだけでも圧倒される。結論として著者はプーチン体制をファシズムと呼ぶべきではないとしているものの、2月24日以降急速に全体主義化が進むいまのロシアは果たしてどうなのか、著者の考えを知りたいものだ。

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 最近、ロシアの世論調査で気になったこと。若い世代にも特殊軍事作戦(戦争)を支持する層はいるのだが、デモなどの行動に出ることには消極的な意見が多いという。行動に出ることをためらう反対派はわかりやすい。しかし支持する者でもそうなのだ。
 つまり正しい意見だと保証が得られなければ言いづらい。全体主義社会では政府を支持する行動でも、自発的に行ってはならない。言うべき意見、言うべき時と場所は政府が決める……。

 あらためて。
 ロシア連邦はただちに撤兵して戦争をやめるべきであり、手をくだした・命令した戦争犯罪人は裁かれねばならず、プーチンは大統領の座から追われねばならない。ウクライナの人々とロシアの抵抗者に支援を。そしてシリアやアフガニスタンミャンマーなど他の地域で苦しんでいる人々にも。

 『牛久』観ないとなーと思いつつ、重たいテーマに向き合う気分ではなく延び延びにしてしまっている。うむむ。
 スターリンの大テロルについての本を読んだら、たいへん得るものは多かったものの気分が晴れやかになるわけもなく。いろいろ試行錯誤した結果、内田百閒を読み返すのが手堅いという結論に至った。ああ積読山脈うず高し。

 ジャック・ヒギンズが亡くなった。享年92。正直、ご存命とは思わなんだ。僕の魂にどっしりと根を下ろしている人。墓まで持っていくのは『脱出航路』。『鷲は舞い降りた』『サンタマリア特命隊』『ヴァルハラ最終指令』、気高い登場人物たち。おつかれさまでした。本当にありがとうございました。ハヤカワは復刊してほしい。電書でお願いします。ブッシュミルズ買いました。

 4月16、17の週末に大阪と東京で開催されるSFカーニバルというイベントで、僕も17日(日)に東京は代官山T-SITEでサイン会をやらせてもらうことになった。オンラインで本を購入された方への定点観測サイン会なる企画もある。詳しくはこちらで。

store.tsite.jp

 そんなに人は来ないでしょあははーんとたかをくくっているので、のんびりじっくりやる所存だ。僕以外のメンバーは実に豪華。よろしくよろしく。