『ソヴェト連邦』

 もともとは1952年に発行された岩波写真文庫の復刻版です。昭和27年ですよ? バリバリのスターリン時代です。ソ連スターリンが世界の前衛として光り輝いていた時代です。しかし、ソ連が実際はどんな国なのか、それはさっぱりわかっていませんでした。今の北朝鮮に少しだけ似ているかもしれません。これはソ連の公表した写真や各種データをもとに、かの国を包括的に紹介した一冊です。内容はさすがスターリン時代、著名人のなかにルイセンコが堂々と登場しています! 自然改造計画! 投票率99.9%以上! あと、当時の各種統計や組織・制度がわかりやすくまとめられているのは結構重宝するかもしれません。スターリン賞の文学・芸術部門で一等に輝けば賞金10万ルーブリがもらえたらしいですよ? 単純なソ連礼賛本かと思いきや、あくまでソ連側の主張として表記していたり、冷静に距離を置いた筆致だったりして岩波あなどれません。

ソ連・中国の旅』(桑原武夫

 こちらも岩波写真文庫の復刻版です。1955年にソ連と中国へ招待された仏文学者、桑原武夫が撮ったスナップ集をまとめた一冊になっていて、これも貴重な記録です。もちろんソ連・中国側がお膳立てした旅行ではありますが、上記の『ソヴェト連邦』が公式写真ばかりだったのに対してより自然な雰囲気が感じられます。もちろんモスクワはソ連きっての豊かな大都市ではあるのですが、それにしても雰囲気が明るいのは季節のせいか、スターリン後という時代のせいか、はたまたフルシチョフ期に向かうソ連高揚期のためでしょうか。国営百貨店グムを散策する、精一杯かっこつけたと思しき(?)青年アベックが印象的でした。そうそう、科学院の歓迎レセプション写真にはこちらにもしっかり同志ルイセンコがすまし顔で写っています。あと中国の写真も貴重ですよ。文革前の中ソ蜜月時代、日中戦争からたった10年、中華人民共和国成立からはまだ6年という時期です。それにしても、重慶に建設されていた「中蘇友好大楼」はその後どうなったのかしら……?

『イン イギリスの宿屋のはなし』(臼田昭)

黒死病 ペストの中世史』(ジョン・ケリー

群青学舎』4巻(入江亜季

ソヴェト連邦 (岩波写真文庫 赤瀬川原平セレクション 復刻版)

ソヴェト連邦 (岩波写真文庫 赤瀬川原平セレクション 復刻版)

イン イギリスの宿屋のはなし (講談社学術文庫)

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黒死病―ペストの中世史 (INSIDE HISTORIES)

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群青学舎 四巻 (BEAM COMIX)

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