• 間が開くとここが長くなります。すいません。

『人生と運命』(ワシーリー・グロスマン)

 スターリングラード戦を背景に、ユダヤ人の物理学者一家やさまざまな軍人たち、ラーゲリやドイツの収容所で生きる囚人たちといった群像を描くグロスマンの大作。ソ連時代は発禁になっており、タイプライターのリボンまで没収されていたそうです。世の中には急いで読みたくない本というのもあって、ゆっくり、ときにはページを遡ったりして読み進めています。これは圧倒される本です。受け止めるのが大変です。ずいぶん影響されそうだなあ……登場人物も多いので読みやすい話ではないけれど、これはなにがなんでもマスト読むべき物語といえましょう。全3巻で1万5千円は安いと言い切ります。

『ロシア宇宙開発史』(冨田信之)

 ツィオルコフスキー以前からボスホートまでのロシア・ソ連におけるロケット・宇宙開発を解説した大著。たいへん面白かったです。ロケット開発の初期にトゥハチェフスキーが果たした役割とか、大戦後の開発体制ではスターリンが随分しっかりした指導をしていたとか……(スターリンは兵器開発についてはかなり有能な面がありますね)。でも一番印象的だったのはソ連で二番目の宇宙飛行士となったゲルマン・チトフ、彼は父親がプーシキンの大ファンで、『スペードの女王』にちなんでゲルマンという名をつけたのだそうです。なんぼなんでも縁起の悪い名前だと思うのだけどファン的にはそれでいいのか。ところでAmazonはえらい値段がついていますが、改訂版がまた出るという話ですよ。

『図解絵本 東京スカイツリー』(モリナガ・ヨウ

 スカイツリーの建設過程を描いた高密度絵本。いっときモリナガさんがトラストラスと連呼されていただけあって、これはトラス構造天国です。どのページもすごいですが、冒頭の建設予定地を俯瞰した街並みの絵が圧巻。モリナガさんの絵は遠景でも手触りや街なかをふらふら歩く感覚がありますね。

ソ連邦建設』

 第二次大戦前にソ連が広報のために出していたグラフ誌「ソ連邦建設」というものがありまして、日本の「FRONT」に影響を与えたことで知られています。それをまとめた写真集があると知り、喜び勇んでOZONに注文。このデザインのかっこ良さよ! レタッチしてある写真も多く、その辺りも興味深いです。

木曜日のフルット』2巻(石黒正数

 石黒さんの描くつり目ショート娘さんはホンットーにかわいいなあ! ああもう!

『PIECES 8』(士郎正宗

『アキタランド・ゴシック』(器械)

 待ちに待っていた器械さんの初単行本です。北国の某県を舞台に、ツノのある女の子アキタちゃんと友人たちが変てこな事件に巻き込まれたりちょっとした冒険を試みたりする物語。変てこな怪異と日常の間に境目がなく、それが淡々と描かれます。アキタちゃんのおしゃま(最近耳にしませんが素敵な日本語です)ぶりもすこぶるかわいい。マジックリアリズム萌え4コマ、マスト買うべし! ちょうお勧め!

『アギーレ 神の怒り』

 早稲田松竹で上映していたので鼻息も荒く行ってきました。16世紀、スペインの遠征隊は黄金郷を目指してアマゾンに向かうが、隊長アギーレが反乱し……という話。史実を元にしています。大好きな映画で、スクリーンで観るのははじめてです。スペイン兵たちを載せて激流を行く筏をそのまま撮る無茶なやり方は何度観てもハラハラしますよ。緊張と弛緩、不安、恐怖を裏返した凶暴さといったものをじっくり見せてくれるのです。『地獄の黙示録』といい、川を往く話は傑作が多い気がしますね。しかしアギーレを演じるクラウス・キンスキーの目ぢからよ! あとアギーレを筆頭にスペイン兵たちの装備が実にかっこよくて、写真集とか出てないかなあ……出てそうにないな……。★★★★★

『フィッツカラルド』

 『アギーレ』と同時上映だったヘルツォークの大傑作。アマゾンの奥地にある田舎町にオペラハウスを建てようという妄執に駆られた男、フィッツカラルドの物語。圧倒されました。『アギーレ』が筏を激流に流すなら、こちらは蒸気船を人力で丘に引き上げます。特撮ではなく本当に。有無を言わさぬ説得力、奇跡的な映画ですよ。アギーレも妄執を追う男の話ですが、こちらはより陽性です。主演は同じくキンスキーで、白い歯が印象的。おんぼろの蒸気船も精鋭とは言いがたい乗組員もすこぶる魅力的で、このまま漫画に出したいぐらい。主人公を見守る娼館の女主人クラウディア・カルディナーレも実にきれいで、全般的にすごく松本零士的な話ではありますまいか。『アギーレ』と併せて必見! 観ないと人生損するよ! ★★★★★

『魔弾の射手』

 オペラ『魔弾の射手』の映画化……といいますか、本当にオペラでした。舞台を映しているわけではなく19世紀初頭のドイツをちゃんと観せてくれますが、みんな原作通りに歌うし、ミュージカルのような作り方というか。絵は良かったものの、情景が現実により近ければ近いほどオペラの展開がどうにも無茶に見えてしまうのですね。たとえば最後に戦友が死ぬ場面、特に説明もなく彼が悪魔に魂を売っていたことに皆が気づいたりというのも舞台なら問題ないのだろうけども。さすがに音楽は素敵です。★★☆☆☆

『戦火の馬』

 第一次大戦に出征した軍馬と、その育て親だった青年の物語。『西部戦線異状なし』での、農民出身の兵が無人地帯でいななく瀕死の馬に心を痛めるくだりを思い出しました。良い戦場ファンタジーではないでしょうか。悪人出てこないし(ドイツの砲兵将校がいいキャラでした)。逐一展開が予想できるわかりやすさと、あとスピルバーグは微妙にWW1に愛が無いなと思わせる描写はちょっと残念だったけども……いやちゃんと西部戦線の情景は見せてくれるんですが、驚きはないというか。もっとも、それらのアラを超えて馬の演技が素晴らしかったです。よくあんなことが出来るものです。CGじゃないですよね。★★★☆☆

『第九軍団のワシ』

 ハドリアヌス帝時代のローマ帝国ブリタニアスコットランドへ遠征に赴き、まるごと行方不明となった第九軍団の象徴である軍旗のワシを奪還すべく蛮地へ向かう青年軍人主従……といった話。サトクリフの原作が岩波少年文庫から出ていますね。そして原作ファンからはかなり不満の声が出そうな映画化ではありました。えらく単純明快な冒険活劇になり、蛮族とのふれあいといったものをほとんど削ってしまう豪快さ。蛮族はあくまで話の通じない恐ろしい敵という昨今あまり見かけないB級感あふれる展開になっております。僕はおおいに楽しみました。TRPGでウィルダネスアドベンチャーがしたくなりましたよ。あとクライマックス直前の展開はたぎるものがあります。大作でこそ無いものの、ローマ軍団兵もかっこいいし、ちゃんとピルム投げていたのもポイント高いし。★★★★☆

人生と運命 1

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ロシア宇宙開発史: 気球からヴォストークまで

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図解絵本 東京スカイツリー

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木曜日のフルット 2 (少年チャンピオン・コミックス)

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PIECES 8 WILD WET WEST

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アキタランド・ゴシック (1) (まんがタイムKRコミックス)

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