ゴッドファーザー』デジタルリマスター

 何度も観ている映画なのだけど、何度観ても大満足です。どうでもいいんですが、僕はコルレオーネ・ファミリーの幹部であるところのクレメンツァが大好きでして。あまり深く掘り下げられてもいない脇役なのに、しかも同輩のテッシオの方が利口だと評されてもいるのに! デブってそれだけでキャラ立つんですもん、ずるいッ。そしてPART2も観たくなりましたよ。

アラトリステ

 17世紀、そろそろ斜陽の帝国スペインと独立をめざすオランダが80年に及ぶ戦争で対峙していた時代。ドイツでは地獄の30年戦争が繰り広げられていた時代。そんな時代を舞台に、スペインの古参傭兵にして剣客ディエゴ・アラトリステの活躍を描いた映画です。主演はヴィゴ・モーテンセン。原作は5巻まで邦訳も出ている長編で(読まなきゃ!)、それを真面目に映画化したせいかNHK大河ドラマの総集編のような味わいが出てしまっているのはちょっと残念。いろいろぶつ切りになっている魅力的なエピソードが多くて……とはいえ、絵は実に素晴らしかったです。ベラスケスが大きく意識されていたり、光と影が印象的なカットが多かったり。そしてレイピアとマン・ゴーシュをぶら下げたスペイン剣士たちのなんともドスの利いた格好良さよ(ウエスタンでのガンマンスタイルを意識しているのかもしれません)。レイピア剣戟好きとしては、レイピアちゃんばらも沢山観ることができて満足です。それもかなり泥臭い立ち回りで! 戦場シーンはさすがにハリウッド大作と比べると低予算ですが、それでもテルシオにピストル騎兵などがんばって出しています。ピストル騎兵の横列なんて映画で観るのはじめてだよ。マッチロックマスケットの扱いも興味深かったし、衣装ももっときちんと観たいし、DVD出たら買おうっと。
 ところで、観たい映画リストに入れていた『戦場のレクイエム』が予告編を観たかぎりだとあまりピンときません。映画館で観なくてもいいかな。そのかわりエドワード・ズウィックの新作『ディファイアンス』は必見だしアルジェリア戦争を扱った『いのちの戦場 −アルジェリア1959−』は気になるし。新宿武蔵野館でやっている山村聡の『蟹工船』も行きたい……音楽が伊福部昭ってだけで僕の中ではえらく盛り上がってるんですが。

『ヨーロッパ革命の前線から』(ラリサ・ライスナー)

 女性革命家が体験した、ロシア革命後の国内戦とドイツ革命のハンブルク蜂起に関する手記。当時20代前半の若さです。国内戦では彼女自身がヴォルガ・カスピ艇隊の政治委員として最前線に赴いており、伝説的なカザン攻防戦(トロツキー装甲列車で駆けつけた戦い!)にも参加しています。その筆致は情熱に満ちている一方、冷静な観察眼と感性にも富んでいます。緊張と弛緩が入り交じる戦場のテンポ、埃まみれでじりじりと暑い南ロシアの空気。これだけでも読む価値はあるんですが、「速水螺旋人の筆でコミカライズするときれいにハマりそうだと思いました」なんて書かれちゃうとね! 新世界への理想がまぶしくて、この後スターリンがやってくるのだと思うと気が重くなります。しかし、彼女はついにそれを知ることがありませんでした。1926年に30歳の若さでラリサ・ライスナーは亡くなっているのです。ひょっとしたらその方が幸せだったのかもしれませんが……いや、でも人間生きてた方がいいよ。長生きしても1937年に処刑されてしまう可能性だって高いのだけど。