ちりとてちん

 NHKの朝ドラ『ちりとてちん』が最終回を迎えました。物語としての締めくくりは昨日で済んだようなもので、今日は後日談といったところ。何度も書いてますが、本当に面白いドラマでした。長いドラマであることを生かした縦横無尽の伏線とか、朝ドラらしからぬアクの強い登場人物たちであるとか。しかし四草萌えの僕ですが、渡瀬恒彦と和久井映美はエエ役者だと思いますホント。一番印象的だったのは、渡瀬恒彦の草若師匠が高座に復帰する瞬間のくだりでしょうか、やー泣けた泣けた。一点不満なところを挙げるとすれば、主人公の喜代美は噺家辞めないでほしかったのう……。でも、最後に「また、いつの日かおつきあいを願います」と言ってくれたし! 続編作るってことやね! 本気に取るよ僕は! ところでDVD-BOXが出るんですが……ぬぬ……。

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

 実は今年はじめての映画館でした。間が悪くてなかなか行けてないのです。そして驚いたのが、立ち見まで出ている盛況ぶり(190分という長い映画なのに!)。短館上映で週末ともなればあり得るのかもしれませんが、いや予約しておいてもらって良かったです。客層は、全共闘世代から若者まで偏りがなかったのも興味深いです。女性客も多かったし。
 さて重い映画でした。連合赤軍のリンチ事件を真っ正面から取り扱っているので正直に言って不愉快な内容です。でも、それを「目を離すな」と力任せにスクリーンに頭を向けさせる力がみなぎっているような、そんな雰囲気に満ちていました。告発でもなければ憐憫でもなく、まさに「こういうことがあったのだ。観ろ!」と言わんばかりの。冒頭に出る「この作品に描かれた事件や出来事はすべて事実だが一部フィクションも含まれる」という言葉に「実録」の意気込みが込められています。
 映画の終盤はあさま山荘が舞台になります。徹底して山荘の内側視点で、映画『突入せよ! 「あさま山荘」事件』と対をなします。実は、若松監督自身が『突入せよ!』に激怒したのがこの映画を作るきっかけになったらしいのですね。立てこもったのはどのような青年たちだったのか、なぜ立てこもったのか、なぜ投降せずに戦い続けたのか、描かれていないし観た人に伝える努力もしていないということで。確かに、『突入せよ!』を観た人はこの『実録・連合赤軍』も観るべきだという気がします。しかし『実録・連合赤軍』は本当に予算がなかったようで(画面からひしひし伝わってくるのよ)、その辺も史実の警察側と連合赤軍側に比することが出来て興味深いのうとか思ったり。
 熱い映画です。彼らの運動は無惨に破綻しましたが、彼らが直面していた問題は今でも存在している筈。また、凄絶な「総括」の論理は狂気と片付けられるものではなく、我々と決して無縁ではありません。政治信条趣味思想関係なく、マスト観れ。

  • 重信房子役の役者さん、演技は下手だったものの全体に漂う「重信感」がなかなかそれっぽくて好き。
  • 軍事訓練中のリーダー格、森恒夫役の演技がギラギラしてて尋常じゃない。おっかない。
  • デモや機動隊のエキストラが少なくて淋しい。そういう趣味の人多いんだから、広く声かければ集まったろうに。ああ僕もジグザグデモをしたかった(でも、監督はその手の人を嫌ってそうだ)。
  • あさま山荘に立てこもって最初にがっつくカレーが実にうまそう。
  • 軍事訓練中にスイトンを食べるシーンがあるのだけど、スタッフでスイトンを調理できる者がおらず、監督自ら炊くことに。「今の若い助監督は、スイトンの作り方も知らない!」……いくらなんでも、そんなことで怒られても。
  • ロビーで、学生運動当時のフィルムが放映されていて思わず見入ったり。あ、江古田の日大だ。あ、YWCAがあるからメディアワークスのすぐそばだ。神田の街路を埋め尽くすデモ隊など、昨今の昭和ブームではあまり取り上げられない光景です。政治の季節だったのだな。ああ学生運動記録映像DVDとか出ないかなー。
  • パンフレットがわりの公式ガイドブックが大変良い本です。入門書として良し資料として良し、もと赤軍派などの面々が集まった対談がギスギスしてて良し。新左翼運動はまだ死んでいません。

若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程