『裏切りのサーカス』
ああッ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の方で呼びたいッ。ジョン・ル・カレの名作映画化、観てきました。映画向けのアレンジも上手かったです。説明台詞が極めて少なく、彩度も低くて緊張感に満ちた空気。誰が「もぐら」なのかは役者を見ればわかってしまうのが難点かしらん(いや原作読んでいるのでもっとわかるんですが)。役者といえば「コントロール」役がジョン・ハートなのが嬉しかったです。いろんな作品に出ていますが、僕にとってはなんといっても『1984年』のウィンストンですよ。今回のスタッフが『スマイリーと仲間たち』の映画化もやりたいと言っている……という噂があるそうなのでこれも楽しみに待つことにしましょう。★★★★☆
『アイアンクラッド』
マグナ・カルタを強要されたイングランドのジョン王はデーン人傭兵を引き入れ、貴族たちに反撃を挑んだ。貴族側はフランスに援軍を要請するが、それまでに南イングランドの要衝ロチェスター城を守らねばならない。圧倒的な国王軍に対し20人の兵で戦う……という物語。いやあ面白かったです! 血まみれ甲冑肉弾戦映画。余計なドラマは少なくて、これこれこういうのが観たいんじゃよという絵が詰まっています。仲間を集める情景とか! リドリー・スコット監督版『ロビン・フッド』の後日談に当たるような舞台で、そしてリドリー版のモニャモニャ感も無い素敵映画。ジョン王もあんなダメあんちゃんが目の覚めるような暗君に! 籠城側ですとロングボウ使いのあんちゃんが好みでした。弓を接近戦で使うのはたぎりますね。TRPGのゲーマーや甲冑バトル好き、暗君フェチはマスト観るべきです。ホントにいいんですよジョン王。★★★★☆
『ロボット 完全版』
バシーガラン博士が開発した完璧なロボット、チッティは博士の恋人サナを愛してしまい、その騒動は……というインド映画。ラジニカーントが博士とロボット二役を演じてまして、久しぶりのラジニ作品です。ムトゥの日本公開から14年、インド映画もCGいっぱいのトンチキ絵を見せてくれるようになりましたよ。ロボットの日本公開版はダンスシーンが削られておりまして、この完全版でようやくちゃんと観ることが出来るのです。そりゃ完全版に行かないと。とにかくドンドン溢れるサービス精神、普段馴染みのないエンターテイメント文法、ムトゥの衝撃再びといった塩梅で目からウロコがボロボロ落ちました。CGのクオリティは正直あまりたいしたことが無いのですが、それ以上に面白い絵を見せてくれるので拍手喝采です。ラジニも還暦を超えてよくまあ身体が動きますね。あの笑顔とおっさんなのに何を着ても似合うかっこよさは健在です。9月には同じくラジニ主演の『シヴァージ』が公開されるようなのでおおいに楽しみにしておきましょう。★★★★☆
『三十三本の歯』(コリン・コッタリル)
社会主義ラオスを舞台にした幻想ミステリ『老検死官シリ先生がゆく』の続編がまさか翻訳されるとは! 長生きはするものです。今回はいよいよ幻想度が増す一方、驚きのゲストがちらっと登場していたりします。原作はもう8巻目まで出ているそうで、それはたいしたものですね。日本でもドンドン出して欲しいです。だから皆マスト買うんだ!
『酔どれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行』(ヴェネディクト・エロフェーエフ)
ソ連時代に地下文書として人気を博した小説。ぐでんぐでんの酔っぱらい主人公が列車に乗りながら、妄想を繰り広げます。幻想と勢いと凄みがたたみかけるようにやってきて、これはえらいものです。圧倒されました。
『赤軍ゲリラ・マニュアル』(レスター・グラウ マイケル・グレス)
あまり期待しないで買ったら、これが1943年に発行されたソ連軍のパルチザン向け教本の翻訳で素晴らしい資料です。きちんとスターリンやカリーニンによる前文も載っているのだから手を抜いていません。パルチザンの基本戦術、ドイツ側の戦い方、敵味方の兵器マニュアル、白兵戦、応急手当に野営に雪中生活に。キノコの見分け方や仮小屋の作り方など実用性の高いこと。マスト買えというようなものではないですが、良い本です。
『総特集いしいひさいち 仁義なきお笑い』
おそろしく密度の濃い、いしいひさいちムック。そうそうたるゲスト原稿やデータも面白いのだけど、なによりご本人が「辞表」とまで言っているロングインタビューが手加減なくて思わず正座してしまうのです。素晴らしい偏屈。これは逃すと後悔しますよ。マスト買うべき。ところで僕が一番好きないしいひさいち似顔は宮沢喜一です。本物のネチネチぶりと融合してものすごい萌えキャラになっているのです。
『Viva! 知られざるイタリア軍』(吉川和篤)
『イタリア軍入門』の続編ともいうべき、イタリア軍さらに深い解説本、そして吉川さんのRSI愛が炸裂しております。ファンなのはよっく存じておるのですが! そろそろ! 南王国軍も書いてくれないかしら! 信頼されない味方、と思われていたのはRSI以上で、それでも精一杯連合軍と一緒に戦った南王国軍です。かっこいいと思うんだけどなあ。
『森の人 デルス・ウザラー』(ヴラジーミル・アルセーニエフ ゲンナージイ・パヴリーシン)
『デルス・ウザーラ』を絵本にしたもので、画家のパヴリーシンという人ははじめて知ったのですが沿海州の湿度まで漂ってくるような細密で世界への愛にあふれた絵を描くのですね。それもそのはず、ソ連科学アカデミーの極東支部で民俗学の研究に長年携わってきたという経歴でした。ため息が出るような一冊、マスト買いましょう。
『レッドドラゴン 1 第一夜 還り人の島』
星海社でweb公開している、ロールプレイングフィクションと銘打ったリプレイが本になりました。気合の入った一冊で、中身もともかくこのライブ性、一緒に読者もその場にいると感じさせる勢いが魅力です。いや逆かなあ、いないの悔しくなりますもん。「俺ならこうする」とか「こういうキャラで参加したい!」と思わせるものは良いものですよ。
『まんがタイムきららMAX』8月号
「アキタランド・ゴシック」目当てで買っているこの雑誌ですが、今回は4424さんの「グレーゾーン」がインパクトありました。面白いかといえば微妙ですが、たいへん挑戦的かつ絵が魅力的なので否応なく気になります。これは保存しておこうっと。
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- 作者: ヴラジーミル・クラーヴジエヴィチアルセーニエフ,ゲンナージイ・ドミートリエヴィチパヴリーシン,Gennadii Dmitrievich Pavlishin,岡田和也
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