ディス・プラン

 その体験が『キリング・フィールド』として映画化されたカンボジア人ジャーナリスト、ディス・プランが死去。ニューヨーク・タイムズ記者シドニー・シャンバーグの助手として働き、ポル・ポト政権下のカンボジアに残留。集団労働を生き延び、脱出した人物です。享年65歳。当時は僕と同世代だったのね。現代も、すさまじい勢いで歴史になっていくなぁ。安らかな最期であったことを願います。
 好きと言ったら語弊があるような気もしますが、『キリング・フィールド』は大好きな映画です。思春期に観たせいか、いろいろ刷り込まれました。僕が絶対出くわしたくない状況のひとつに「知らない言葉をまくしたてる連中が、頭にきた様子で銃を突きつけてくる」というのがありまして、この映画のせいですね。あと、作品に登場する記者やカメラマンが非常に格好良くて、これを観てジャーナリストを志した人もいるんじゃないかしら。清水清さん言うところの「搾涙器」映画でもありまして、エンディングで「イマジン」が流れ出すと何度観ても涙ボロボロになってしまいます。ずるいや。未見の方はマスト観るべし。80年代アメリカ映画の傑作です。
 映画の原作になった、シャンバーグの手記『ディス・プランの死と生』って翻訳されてませんよね。角川のノベライズは持ってたりするのだけど。
 ポル・ポト民主カンプチアというのは、近代史上きわめて妙ちきりんな国家でした。あのキリングフィールドはスターリンの大粛清とも毛沢東文革とも違います。それこそ連合赤軍のリンチに近い気もするし、一体何を考えて統治していたのか、その深淵に今でも興味が尽きません。