• 間が開くと膨大な漏れが発生するのですがもうこれはどうしようもありません。
  • フランスのイラストレーター、ピエール・ジュベールの画集を2冊ほど買いまして、これがもう眼福きわまりなくて日々興奮しながら眺めています。日本だと「カラーイラスト世界の生活史」でご存じの方がいると思います。なかでも『民族大移動から中世へ』は素晴らしく、この地に足のついた異国感、エロとシームレスの生命あふれる躍動感など大ファンなのです。で、フランスでなら画集が出ているはずと探して入手したものでして。
  • ジュベールの絵はエロいと描きましたが、その作品を見ていくとこの人本気で少年趣味なのがよくわかります。戦前から始まるキャリアではボーイスカウトの絵をよく手がけており、このイラストなどはなんといいますか、目にした時ウワアと声が出ました。ボーイスカウトはオフィシャルでこういう絵OKなんですか。他の画集も探すぞう。

『普通の人びと ホロコーストと第101警察予備大隊』(クリストファー・R・ブラウニング)

 読んだのはチョイ前なのですがこれは本当に得るものの多い一冊でした。下世話な言い方をすれば漫画のネタがいっぱい。ポーランドホロコーストに関わったドイツ警察部隊、戦後行われたその将兵への尋問をもとにしたノンフィクションです。
 隊員は精鋭とは程遠く家族持ちが多い、世間知もわきまえている普通の大人たち。中年なのでナチ教育を受けていたわけでもなし。そんな彼らがユダヤ人虐殺に手を染めてしまうのです。部下を放り出して狼狽し泣き出す将校、率先して意気軒昂とユダヤ人を射殺して回る将校、婚約者をホロコーストの場に呼び出して平然としている者、掃討を命じておきながらストレスで体調を崩す者、酒に頼る者、隙あらばどこかに隠れている者……そして次第に皆慣れていきます。
 積極的に加担した隊員は一割。八割は消極的に加担し(わざと狙いを外したり、誰も見ていなければ逃がしてやったり)、残り一割が忌避を明言して他の任務に回してもらったりしています。そういうことが可能で、特に処罰の対象にもならないのは驚きでした。そういうことをすると隊内での出世は望めなくなるのですが。
 大多数の八割は「虐殺に手を染めないと臆病と思われる」「仲間を裏切ったとされる」などと感じていたそうです。つまり虐殺に加担しなかった一割の人は倫理的に正しいし英雄的だしほんとうに尊敬に値するのだけど、組織や社会には溶け込めないタイプが多かったのかもしれません。
 そう考えると人間ちうのは本当に難儀なものでして。これはホロコーストの話だけど、普遍的な命題のはずです。日本軍の残虐行為、特攻隊、ソ連の大テロル、企業の内部告発、学校のいじめエトセトラ。まさに地続き。名著といわれるわけです。いろいろ語りたい!

『帝国の「辺境」にて 西アフリカの第1次世界大戦 1914〜16』(こんぱすろーず)

 夏コミで頂いた同人誌で、そういえばまだご紹介していませんでした。とにかく読み応えのある一冊です。アフリカ史ですら不幸なことにあまり知られていない本邦で、第一次大戦でどうだったかなどということをきちんと書いている本がありましょうか。
 当時世界中に張り巡らされていた電信ケーブル網や、ヨーロッパの戦禍が現地の農業に与えた壊滅的な影響など、世界的戦場の一部だった西アフリカ。一方で貧弱な通信・交通インフラや兵站を圧迫し続ける風土病の存在、それに起因する出先機関の独断専行……「冒険的帝国主義者」最後の時代でもあった戦場。マクロな戦略と、前線指揮官のミクロな体験、両方の視点からトーゴ、そしてカメルーンの戦いを解説しています。
 河を遡上するはしけに「ドレッドノート」と名付けてみたり、少人数での戦いに機関銃は恐るべき威力を発揮することが再確認できたり、銃弾の枯渇に悩んだドイツ軍が現地で弾丸を製造してみたり(!)、興味深い小ネタも満載です。現地兵や植民地エリート、そしてなにより大量に動員されてその多くが帰れなかったポーターたち、彼らにとって白人の戦争とは一体なんだったのか。書店委託などはされていませんが、冬コミ等でまた頒布すると聞き及んでおりますので機会があれば是非一読をお勧めします。マスト読むべしです。

『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上』1(ブラッドレー・ボンド、フィリップ・N・モーゼズ)

 重金属酸性雨そぼ降るネオサイタマ、ニンジャ抗争で家族を殺されたサラリマン、フジキドはニンジャソウルに憑依され、ニンジャスレイヤーとして復讐に身を投じる! イロモノとして愉快。復讐譚として痛快。サイバーパンクとしてはたまた快哉! タダモノではない言葉酔い。マスト読むべし!

アイアン・スカイ

 フィンランド・ドイツ・オーストラリアによる「ナチスが月面から攻めてきた!」ボンクラ映画です。熱くてタチが悪くて意外に真面目な作風は、いかにもヨーロッパのオタク映画といった塩梅。実のところナチより圧倒的にアメリカの方が(さらに言えば共和党が)酷い扱いをされておりまして、あーヨーロッパのコメディではこういうキャラ立てになりますよねー。徹底的にボケ倒すのは僕好みです。ツッコミがいません。いろんな方面に気遣いをせねばならないハリウッドでは撮れない種類のお話ですね。
 ソーシャルファンディングで制作費を集めたことでも知られておりまして、それでここまでの映画を撮れるんだからいい時代になったものです。お勧め! ナチの円盤が登場するロシアの戦争ドラマなんてのもありまして(真面目な顔してホラを吹く種類の作品ぽいです。たまらん)、この機会に日本でDVD出してもらえませんでしょうか。

普通の人びと―ホロコーストと第101警察予備大隊

普通の人びと―ホロコーストと第101警察予備大隊

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)