「軍事研究」1月号

 江畑謙介のロシア軍改革に関する記事が読みたくて購入。前号のグルジア紛争関連の記事ではサアカシュヴィリがこてんぱんに批判されていました。熱いハートとクールな筆致という江畑節は無味乾燥にならず、かといって情緒過多にもならず、どこかおかしみと余裕をたたえていて好きなのです。さて今回の記事ではロシア軍の前途多難ぶりを丁寧に紹介しています。ロシア軍は歴史上常に前途多難だったので今更驚きもしませんが。それでもエリツィン時代の軍事予算関係は、それはもうひどかったようです。ちょっと長くなりますが引用してみましょう。

 ソ連邦が崩壊してロシア連邦になったエリツィン大統領時代、名目上(ロシア議会のデュマが承認する)の国防費は依然として米国に次ぐ世界第二位であったが、本当に支出(行使)される額はその10分の1にも満たないだろうと推測されていた。実際、ロシア軍の状態を観察するなら、とてもデュマが承認した額の国防予算が使われているとは思えない。
 ではどこに消えたかというと、1.(なぜか知らないが、あるいはロシアの民族・国民性なのか)政府が求め、議会が公式に認めた予算が、とても現実的には不可能と思われる額でも(ロシアの「超大国」としてのプライドからか)構わず、当然、実際に支出できるだけの額しか支出されなかった。 2.また現実にそれだけの額が支出されなくても、議会はもとより政府も無頓着で、責任を感じなかった、そして 3.支出された予算は、それを執行できる権限を持つ者が私的に流用した、などの理由が考えられる。おそらくこれらの全てが積み重なってのものだろうが、予算執行権を持つ(少なからぬ)将官の中にはその金を一度自分の口座に入れて利子を稼いだり、利回りの良い債権などで運用して利ざやを得た者もいるという。それで、あとで元本を予定通り軍のために使用したかとなると、これも明らかではない。

 まぁ、なんだってここまでモラルハザードが起きまくったのか不思議になりますが、かといってロシアという国はそれなりに一応なんとかなっているのを見ると、世界が希望に満ちて見えてきます。このたくましさを見習わねば。いや見習っちゃイカンのかな。

軍事研究 2009年 01月号 [雑誌]

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