「コマンドマガジン」Vol.85

 見本誌で頂いたコマンドをめくっておりましたら「コーカサス通史」なる新連載が。ほうほうと読んでみると、これがちょっとひどい内容で驚きました。「コーカサスザ・カスカフ)地方の歴史をわかりやすく言えば云々」という出だしからしてアレレと首をひねったのですが、まぁこれぐらいならミスタッチでありがちな気もします。読み進めていくと「エルブス山脈(正しくはエルブルズ山脈)」「タゲスタン(ダゲスタン)」「キリスト教ネウリスト派ネストリウス派のことだろうか?)」「ノブゴロドフ公国ノヴゴロド公国、もしくはノヴゴロド共和国)」「バグー(バクー)」……なんですかこの独創的な誤記の数々は。何度も出てくる言葉もあるだけに、単なる打ち間違いとも思えません。記事の対象にまったく興味が無いか適当に書き飛ばしているとしか考えられず、一気に記事の内容に信憑性がなくなります。その内容自体ひどいもので、モスクワ大公国の勃興に関しては乱暴なうえ間違いだらけ。カフカース史についてオスマン帝国を出しておきながら、アゼルバイジャンから出たサファヴィー朝には触れもせず。先日の南オセチア紛争については石油パイプライン利権が原因だと得々と書かれても新鮮味はないし単純化しすぎだし(ガスプロムを「ロシア最大の石油天然ガス企業」と表現するのもどうでしょうね)、総じて役に立たない解説と言わざるを得ません。坊主憎けりゃの論法で、「単調で脂っこいロシア料理」という表現に「お前なに食ってきたんじゃ」と突っ込んでしまう有様です(勿論味覚は主観的なものですし、著者がグルジアを訪れたのは90年というソ連末期のころですから今とはまた違うのでしょう)。そんなわけでおおむね腹に据えかねたのですが、まぁ次回も楽しみにしておきます。
 一方で「地中海戦記」は相変わらずしっかり読めて嬉しいです。最近はクレタ戦という派手な時期を扱っていますが、地味な状況でも丁寧すぎるほどに解説しているので得るものが多いですよ。この頃のドイツ空軍の猛威たるや、日本の空母艦載機より活躍してるんじゃないかしらん。

コマンドマガジン Vol.85(ゲーム付)『レッド・タイフーン』

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