晴れのち曇り

それからしばらくして、叔父が生まれたままの姿で家の中央に現れ、顎髭をひとなですると一言も口をきかず、藁と桶とハタキのあとを追ってペチカの中へ突撃した。(中略)下女がかまどの焚き口に蓋をした。わたしは叔父が自分の体で焼肉をこしらえようとしているのだと思った。だが、その期待ははずれた。シチューや粥を煮こみ、パン、ピロシキ、菓子パンを焼く、このペチカの中で、わが最愛の叔父がもぐりこんだこのペチカの中で、すぐにピシピシと大きな音がし、『ウハー!』という叫び声、うめき声、感嘆の声があがり、『すばらしい!……すてきだ!……いいぞ!……いいぞ!……アーアーアー!……ほれ、もっと、もっと!……ウー、なんてすばらしい!』といったたぐいの、ありとあらゆる賛辞がとどろいた。わたしの叔父が教会の雑役夫のような馬鹿力で我が身をくまなく鞭打っているのだ。二、三度、ザブザブと水をかぶる音がして、『開けてくれ!』という、くぐもった悲鳴が聞こえてきた。下女がペチカの蓋を開けると、中から海老のように真っ赤になった叔父が頭から這い出してきた。叔父は顎髭をたくわえた頭をもう一度ペチカの中につっこんで、ハタキがはいった桶をそこから取り出すと、アダムのように穢れのない状態で家の中を歩き、冷水を浴びるために地下へおりていった。

 『風呂とペチカ』を読んでいるとこういう描写がありまして、これは古今東西無数にある風呂描写のなかでも相当に気持ちよさそうな部類に入ると思うのです。そんなわけでンもう辛抱たまらず、またイマイチ本調子ではない体調を治すためにも近所の銭湯のサウナに行ってきましたよ。でも日本のサウナはロシア式の蒸風呂ではないんですよなー。