『核時計零時1分前―キューバ危機13日間のカウントダウン』(マイケル・ドブズ

 コメント欄で実松さんにお勧めいただいていたのを読了。著者曰く『史上最大の作戦』の手法で、キューバ危機を解説した本です。素晴らしい一冊でした。ロシア側の資料や軍人へのインタビューも駆使し、またアメリカ側の未公開資料も調査した結果、今回はじめて明らかになったり詳細に述べられた事実が紹介されます。たとえば核弾頭が搭載された巡航ミサイルキューバに配備され、グアンタナモ基地を狙っていたことなど……。キューバ危機といえば冷戦中米ソが繰り広げたチキンレースのように表現されることもありますが、著者はそれも否定します。危機発生直後からケネディフルシチョフの両者とも戦争をする気はまったく無く、海上封鎖で「にらみ合っていたら相手が先にまばたきをした」ような状況は伝説だとしているのです。むしろ危機は両者が末端までの事態を掌握できなかったからこそ進行したのだと。『八月の砲声』などに匹敵する良著でした。マスト読むべし。

伊藤計劃記録』(伊藤計劃

 一周忌を迎えた伊藤計劃さんの、生前遺したエッセイや解説、インタビュー、映画レビュー、また本にまとまっていない中篇などを集めた一冊(同人誌に掲載された短編もありますよ)。帰省中に地元の書店で買おうと思ったら売り切れでした。すぐに入手出来なかったのは残念だったけど、見ず知らずのファンがいはるということで嬉しくもなりますね。水戸コミケへの往復車中で読みます。

『天空のリリー』(千田誠行)

 第二次大戦中のソ連軍女性パイロット、リディア・リトヴャクが主人公のラノベが出るですって!? と仰天しながら待っていた本です。Po-2やYak-1が出てくるラノベというだけでただごとではないですよしかも表紙に。まだパラパラ読んだ程度ですが、ソ連・ロシア度はかなり薄めかしらん。いや、僕がゲップが出るほどのロシア味ではそれはそれでよろしくない気がするのでこれもアリです。でもせっかく実在の人物をモデルにしているんだから……とも思いつつ、リリーというキャラを読者と地続きで見せるのにハードル高くしても仕方ないでしょうしね。それにしても『ディエンビエンフー大作戦』が先に出ていたのは本当に良かった(でも軍人としてはマルチナはリリーの後輩になりますね。会っていたら面白いのに!)! いやそういう問題ではありません、もっと出るべきですジャンルになるべきです。アンケート送るべしと思ったら一迅社文庫はそういうのが無いのですよ。まずは続編を大々的に期待しております! 皆も買うんだ!

核時計零時1分前―キューバ危機13日間のカウントダウン

核時計零時1分前―キューバ危機13日間のカウントダウン

伊藤計劃記録

伊藤計劃記録

天空のリリー (一迅社文庫)

天空のリリー (一迅社文庫)