『キングダム』

 もう終わってしまうので、あわてて観てきました。サウジアラビアアメリカ人を標的にした大規模なテロが発生、その捜査にFBIのチームが向かうが反米感情は根強く……というもの。基本は『ブラックレイン』などと同様の「刑事が外国に行って、地元の警察とギスギスしたり協力したりして云々」という古典的な流れですね。
サウジ側の主役、国家警察の大佐が大変格好良かったですよ。信心深いムスリムで真面目という、まぁ無難な役柄でしたが。子供の頃に超人ハルク観て警察を志したという親米優等生なくだりはちょっと萎えたかしら。しかし、中東の人が制服着るとなんであんなにかっちょええのだ。あとクローズアップが中心でカメラが揺れるので、僕は途中から結構酔ってしまいました。
 どうもリヤドには観えないと思ったら、撮影はアブダビで行われていたようです。まぁ、頭の固いサウジ政府は怒りそうな描写もあったしなぁ。全般的に優等生映画かと思っていたら、最後の最後でちょっとひっくり返してくれましたよ。
 冒頭のテロでFBI捜査官が命を落とし、泣き崩れる同僚に主人公が慰めの言葉をかけるくだりがありまして。最後に「あのときどう言って慰めたんだ」と訊かれると、主人公は「奴らを皆殺しにしてやる、と言った」と答えるのです。理知的な性格として描かれていた人物なので、まずこのギャップがゴツゴツしていて印象的。一方でテロの指導者が射殺されたとき、泣きじゃくる孫娘に「心配するな、仲間が奴らを皆殺しにする」と言い残したことが同時に明かされます(また、彼も私生活では良き家庭人だったことが暗示されていたり)。最後に客をイヤーな気分にさせて映画を締めくくる辺り、タチの悪い人が撮ってますね。ステキ。