有頂天家族』(森見登美彦

 京都という街には人間のほかに天狗と狸も暮らしているのです。「天狗は狸に説教を垂れ、狸は人間を化かし、人間は天狗を畏れ敬う。天狗は人間を拐かし、人間は狸を鍋にして、狸は天狗を罠にかける。そうやってぐるぐる車輪は廻る」そんな街で下鴨に住まう狸一家が三男、矢三郎なる面白いことがめっぽう好きな狸が主人公。脇を固めるのは耄碌した天狗の赤玉先生、天狗となった美女弁天、そして多くの狸たち。これが皆それぞれ勝手に人生を謳歌し、ぶつぶつ文句をこぼし、都大路を駆け巡る。実に素敵なお話でした。明かりをともした納涼舟や蕎麦屋の立ち回り、クライマックスで偽叡電寺町通りを疾走するくだりなど、小説なのに実に絢爛たる絵が浮かびます。これは劇場でアニメにして欲しいなぁ。漫画なら『ORION』や『ドミニオン コンフリクト編』の頃の士郎正宗がすごく合うような気が致します。森見氏曰く「『有頂天家族』の第二部が来年に無事出版されることを、筆者は祈るものである」、ええもう! すごい勢いでお祈りします! いろいろ解決していないことがあるじゃないですか! 僕は去年『四畳半神話大系』でファンになったにわかですが、どれを読んでも面白いというのはこれは実に素敵なことですね。おかげさまで人生がずいぶん幸せになりました。まずは銭湯に行き、そして赤玉ポートワインを呑んでみようかしら(呑んだことないのです)。身内なら朝佳さん魚蹴さん(id:walkeri)にお勧めですよ、と名指ししてみましょう。

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)