生頼範義(「頼」は正確には違うのですが、はてなで表示されませんでした)

  • Facebookの生頼範義ページで、その作品群を紹介していましてあらためてその仕事量に圧倒されます。「え、これも生頼さんの仕事だったの!?」と驚くものもあり。Twitterでマイフェイバリットな生頼作品が多く挙げられていましたが、小説に映画にゲームに……とてんでんばらばらで、そしてどの絵もマイフェイバリットさもあろうというものばかり。とんでもないことです。「表紙やポスターが本編より面白そう」と枕詞のように評されるイラストレーターはそうそう出てこないでしょう。
  • 緑色の宇宙、ギラギラした男女、ドラマを演出する群像……など生頼作品の魅力を挙げていけばきりがありません。そんななかで僕がいちばん好きな絵を無理矢理ひとつ挙げるならば『女王陛下のユリシーズ号』の表紙になります。クライマックスを見てきたかのような筆致。損傷をこれでもかと強調する後ろ姿。敵ヒッパー級重巡とぶち当たることを確信させる構図。陰鬱な北大西洋の空で輝く照明弾。落ちたら死を意味する凍えた暗い海。その深淵をかきまわすスクリューと航跡。目を奪うホワイトエンサイン。完璧。
  • 僕を形作っているものの少なくない部分は生頼さんに与えられたものです。おつかれさまでした。本当にありがとうございました。
  • 去年、今年と宮崎で生頼範義展をやってまして、僕も観に行っては腰を抜かして帰ってきています。来年も開催されるそうですし、是非是非行きましょう。宮崎もいい街ですよ。

屍者の帝国

  • 原作と話を変えること自体を批判するつもりはないし、絵作りへのこだわりは感じられたし(ちょっとちぐはぐさも感じましたが)……うーん、ひとつ言うならば、登場人物がなにかと叫ぶお話作りはもういいんじゃないの、と思ったことでした。その度に醒めちゃって、我ながらしょうもないことなんですが。感情のラインが唐突なのかな。★★☆☆☆

リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』

  • かわいいかわいい。そしてよく動いて気持ちいい! スーシィ好きなんですが、新登場のアマンダもいいなあというわかりやすさ。子供向けアニメの体裁で大人向けに作るというアンバランスさを気にするか、そこを踏まえて楽しむか。★★★☆☆

ジョン・ウィック

  • キアヌ・リーブスが撃ちまくり人を殺しまくる映画。面白かった! バカと格好良さの虚実皮膜を攻めていくようなスタイルで、その塩梅が素晴らしいです。ジョンを単純に見せているのに対して、敵であるロシアンマフィアのボス(津川雅彦に酷似)が実に素晴らしい役どころでした。有能で頭脳派(アタマ使う映画じゃないから難しいことはしないけど、バカじゃないよという見せ方が上手い)で、本人にもいろいろ事情がありそうで薄っぺらくなく、ちゃんと悪い奴でしかも茶目っ気があり……敵の魅力って大事ですね。続編も楽しみにしています。★★★★☆

  • スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさん、ノーベル文学賞受賞おめでとうございます。あなたの著作に出会えて、そしてあなたの著作を通して多くの人に出会うことができて本当に良かった。生き方に影響を受けたといっても決して過言ではありません。出版や翻訳に関わった皆さんにもお祝い申し上げます。
  • ブレジネフ的快速ではありますが、夏コミの新刊をCOMIC ZIN委託しました。ご贔屓によろしくお願いします。

『日本のいちばん長い日』

  • 原田監督のリメイク版です。ベテラン俳優陣はさすがでした。特に山崎努の鈴木総理は茶目っ気もありつつ信念を感じさせて素晴らしかった。そしてそれ意外はまったくダメです。なぜ終戦の物語を凡庸な家族ドラマに落としこんでしまうのか。わざわざ阿南陸相や鈴木総理、昭和天皇といった人物の内面にスポットを当てるなら、もっと突っ込んだ見せ方をするべきで通り一遍な解釈しかできないならやらんほうがよろしい。一軍を率いる将としては無能、一撃講和を主張し、また跳ねっ返り気味な陸軍を統率するにあたっては腹芸を用い、熱烈な尊皇家で……という阿南惟幾を単なるいい人と描いては魅力も何もあったものではないです。国民を思うと同時に皇統断絶への個人的恐怖を感じていたはず(昭和20年初夏の昭和天皇は体調崩し気味だったそうで、ストレスは相当なものだったのでしょう)の昭和天皇も薄っぺらい名君では何をか言わんや。そしてその薄っぺらいドラマのために宮城占拠事件の枠が削られるもんだから少壮将校たちのギラギラした行動力に説得力が無くなります。
  • 岡本喜八版と比べる残酷なことはしないけど、敢えて言うならばナレーションや人物説明の字幕が無いとテンポや緊張感を削ぐことがよくわかりました。誰が誰かわからないし、状況もあやふやになるし、説明台詞は増えるし。
  • あ、中嶋しゅう東條英機はどこからどう見ても素晴らしく東條英機だったし、でも劇中での扱いはまったくダメだったので(まるで皇道派でした)、同じ役者で別の映画を撮ってほしいですよ。
  • 映画代返せ、という大駄作でないだけにつまらない作品でした。ザ・凡庸。★☆☆☆☆

ベルファスト71』

  • 北アイルランド紛争が最悪の状況を迎えていた1971年のベルファストを舞台に、部隊からはぐれてユニオニスト地区に取り残されてしまった兵士のドラマ。ミニブラックホーク・ダウンみたいなサバイバルものかと思ったら、それだけではなくIRA暫定派、ロイヤリスト民兵、軍工作部隊が交錯するエスピオナージュものでもありました。こうでなくっちゃ、素晴らしい。
  • 全編にわたって油断ならず、緊張感みなぎる佳作です。常に街頭で車が燃やされ、でもその前で子供が遊んでいる日常。暴力と馴れ合うことができたかと思ったら爆弾一発で吹っ飛ぶ世界。隣人を信用できない毎日。たまたま最近『紛争という日常: 北アイルランドにおける記憶と語りの民族誌』を読んでおいたのがとても良かった。お勧めです。★★★★☆

『野火』

  • 塚本晋也監督版です。ひとことで言うならば紛うことなき傑作。内務班の地獄や前線ですり潰される兵士の地獄、戦争指導の地獄に特攻の地獄を描いた邦画は今までもいろいろありましたが、戦記でさんざん読んできた密林の地獄……飢餓、白骨街道、蝿とウジ、あらゆる尊厳が剥ぎ取られた地獄は戦後70年経ってようやく今作で垣間見ることができます。ソ連の『炎628』、ドイツの『スターリングラード』に比肩しますよ。
  • 市川崑版も傑作でしたが、あの客観性叙情性、敢えていえば上品さのようなものは塚本版にはありません(あとで市川版を観たら説明台詞を含めて会話の多いことに驚きました)。主観に立った悪夢です。主役の田村一等兵も被害者として免罪されない容赦の無さ。もちろんこれはフィクションですし、居心地のいい映画館で鑑賞することは現実の百万分の一を撫でるにも値しない体験でしょうけども、、この地獄に多くの日本兵が投げ込まれ、生還した者もその記憶を抱えて戦後を過ごしてきたのかと思えば慄然とします。
  • 塚本監督は予算集めに本当に苦労し、『野火』は超低予算映画で作らざるを得なかったそうですが打診されてカネを出さなかった面々は恥じるといいぞ。
  • スペクタクル映画ではないけど、この濃密な絵は絶対にスクリーンで観るべきです。マスト。★★★★★

  • というわけで帰省のついでに宮崎へ足を伸ばして生頼範義原画展2へ。
  • フネに乗る機会はできるだけ逃さない、とばかりに神戸からフェリーです。んでもって大収穫。さんふらわあは夜になるとデッキへのドアが施錠されて外へ出られないのですが、宮崎カーフェリーは夜中でもデッキをふらふらすることができます。
  • 太平洋上に横たわる満天の星空! 天の川! 人工衛星、飛行機、流れ星! これですよこれ。星空をポカンと見上げるのが大好きなので、いくら眺めても飽きません。大きなうねりのおかげで星空が動いて見えるのもまた愉しからずや。水平線に目をやって見張り員気分にも浸りつつ、満足満足。
  • クリアな星空という意味で今まで観たなかでいちばん素晴らしい星空は、北海道は屈斜路湖で見上げたもの。ドラマチックという点ではソユーズ打ち上げのとき眺めた夜空。カシオペアの真下に発射台があったり、ロケットの炎が星のひとつになっていったり。
  • 生頼範義展を見たあと、飛行機まで中途半端に時間が余ったので県立総合博物館に行ってきました。どの県でもそれなりに立派な博物館があって、見学するのは楽しいものです。しかも宮崎県立博物館は入場無料だ。文化資本万歳。
  • 宮崎県というのは不思議なところで、古くからの文化を持ちつつ(なにせ天孫降臨の地です)いまいちパッとしない(失礼)。有名な領主もいないし、チキン南蛮が名物というのも微妙だし(好きだけど)。調べてみると江戸時代は複数の藩に分割され、その最大級でも七万石というささやかさ。明治にはいっとき鹿児島県の一部だったそうです。他と隔絶した九州の孤島感半端ない。その分、宮崎市はまだ地域の中心としてそれなりに活気を保っている印象はありますね。これで映画館さえもっと充実していたら住んでもいいぐらいなのに。
  • さておき県立博物館、大きくはないものの展示品も充実していて満足しました。特に昭和30年代の宮崎市にあった文化住宅を再現した展示と、あと民俗学コーナーがよろしかったです。
  • 宮崎は海あり山ありなので、たしかに特筆すべき名産は無いかもしれないけどそのかわりなんでもあったというイメージが残ったですよ。お茶も養蚕もがんばっていたのですね。

晴れのち雪

  • というわけで、一年間放置してしまいましたこちらもエイヤと再開しようと思います。ただ、気合いは入れずにのんびりとやっていきますよ。
  • コメントも横着して基本的にレスはサボりますが、ちゃんと見てますのでよろしくお願いします。
  • 去年は本当に色々ありましたが、長くなるのでここでは挙げますまい。
  • 2015年の目標は去年に引き続き「旅行する」「人と会う」に加えて「ゲームをする」「計画的に仕事する・生活にメリハリをつける」を心がけようがんばります。後者は40年間挑戦し続けてついぞできた試しがなく、おそろしくハードル高いのですが、理想は高く果てしなく! 去年は多くの方にご迷惑おかけしてしまった……現在進行形でしている……この正月も仕事を実家に持って帰ってきてます……早くも泥縄! ……なので……。
  • 冬コミは皆さんありがとうございました。部数を読み間違えて昼過ぎには新刊が完売してしまい申し訳ありません。近々書店に委託しますし、コミティア等にも持っていきますのでもうちょっとお待ちください。
  • 去年は下半期の映画が豊作でした。ベストは『グランド・ブダペスト・ホテル』! 3度も映画館に足を運んでしまいましたよ。また名画座でやるみたいなのでもう一度行きたいです。『聖者たちの食卓』『誰よりも狙われた男』も素晴らしかった。『フューリー』は面白いというよりすごい映画、語りたくなる映画カテゴリで、おおいに僕好みでした。うっかり語った結果がこちらになります。『ガガーリン』と『ベイマックス』はまだ観てません。観なきゃ! 大抵の映画は賞賛と首をひねるのが入り混じるものですが、『ベイマックス』は絶賛しか聞こえてこないのでいやがうえにも期待が高まります。
  • 年末に兵站漫画『大砲とスタンプ』4巻が出ました。面白いのでちょう買ってください。ピンズがついてくる限定版もありますのでヨロシクヨロシク。
  • 1月7日にはマイペースなスパイ漫画『スパイの歩き方』が出ます。
  • 同じく13日には2008年に出た初作品集『速水螺旋人の馬車馬大作戦』が新装版となって復活! 新しい原稿を増やした上で二分冊となりまして、その一冊目『速水螺旋人の馬車馬大作戦bis 赤本』が発売となります。
  • まさに冬季攻勢まっしぐら、今後もまだ出ますので財布にご負担はかけますがどれも面白いのでよろしくお願いしますね。