『イリュージョニスト』

 『ベルヴィル・ランデブー』のシルヴァン・ショメ監督最新作です。喜び勇んで観てまいりました。1959年のパリから始まり、初老の手品師とスコットランドのど田舎から出てきた女の子アリス、この二人の妙な同居生活を描いたお話。前作はブラックなスラップスティックでしたが、今回は皮肉は効いているものの、じんわり淡々とした物語になっています。『ぼくの伯父さん』のジャック・タチが脚本で、お蔵入りになっていたものをショメ監督が作品化。全編どうということのない絵なのに涙腺がゆるむ不思議。主役の手品師はいい加減くたびれてうだつのあがらないおじさんだけど、アリスの前では実に紳士です。このやせ我慢っぷりはハードボイルドではないですか。ショメ監督作品というのは絵が僕のストライクゾーンど真ん中でして、愛と悪意(この愛情こもった意地悪さというのはショメ監督作品に共通しますね)を込めたディフォルメが効いた人物、どっしりして大地に根が生えたような風景、それらが画面内で生きているのがほんとうに素敵。これはたまらぬ。そんな人が女の子を描いたらかわいくないわけがないのでして、萌え殺される人も多いのではないでしょうか。いやはや素晴らしい映画でした。可能ならば映画館でマスト観るべきです。僕ももう何度か行こう……東京でも二つの映画館でしかやってないのが惜しい!

『オーケストラ!』

 ソ連時代にオーケストラを解雇され、今は劇場の清掃員として働く元指揮者アンドレイが、ボリショイ交響楽団と偽ってパリ公演を企み、モスクワでうらぶれた生活を送っているかつての仲間を集め……というフランス映画。落ちぶれた超一流の面子が再起をかけて頑張る、というところはちょっと違いますが基本『がんばれベアーズ』『ブラス!』といった話の流れを汲むもので、そのオーケストラ版とくれば面白くないわけがありません、しかもロシア。基本はコメディなのに、ロシアのユダヤ人やロマ、マフィアに新興財閥、共産党といった要素を織りまぜていたのには感心です。なかでもかつてのボリショイ楽団支配人で、その後ロシア共産党で党官僚として働いていたマネージャーのおっさんがすごくいい役でした。パリに憧れるゴリゴリのコミュニストなのです(余談ながら前モスクワ市長のルシコフに酷似してまして)。フランスとロシアは昔から深い縁があったことをうまく取り入れている感がありました。フランス共産党が出てきたのはニヤリとしたり(フランス共産党ソ連共産党べったりだったのです)。日本では去年公開だったそうで、まったく知らなかったのですよ。アンテナ鈍ってます。幸い近所の映画館で特別上映していたので駆けこんできました。上映後は拍手を送りたくなる映画でしたよ。DVD買わなきゃあ。

  • イリュージョニスト』観たときに予告編がかかっていてすごく気になった『プリンセス トヨトミ』。なんですかこのなまら面白そうな映画。これに近いネタを最近サタスペのキャンペーンでやったなぁ。呑み屋で盛り上がったアホネタを形にしちまったような作品はまさにプロの仕事だと思います。かくありたいあやかりたい。絶対観るぞ。

変ゼミ』5巻 限定版(TAGRO

『ブレット・ザ・ウィザード』1巻(園田健一

『Wings of Songs.』(大本海図)

DVD付き限定版 変ゼミ (5) (モーニングKC)

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ブレット・ザ・ウィザード(1) (アフタヌーンKC)

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Wings Songs. (ガムコミックス)

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