『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(ジュノ・ディアス)

『アレクサンドリア』

 末期ローマ帝国アレクサンドリアが舞台の史劇です。原題は『AGORA』。地動説や天動説を研究する実在の女性哲学者・天文学者ヒュパティアを主人公に、熱血漢のローマ貴族、キリスト教徒学生、奴隷たち、初期キリスト教会の司教たちが互いの思惑を秘めつつ、どうにもならないものがどうにもならなく転がっていきます。貧民にパンを分け与えつつも、非寛容と熱狂と憎悪を操る反知性主義者としてふるまうアレクサンドリアキリスト教会は、かなり激越な役どころですね(ハレルヤを連呼しつつ襲ってくる修道戦士たちがかっこ良くてですね。会いたくないけど)。市街のセットは大がかりだしエキストラも多いし、そのうえスペクタクルでもない大作史劇でこの内容は……と思ったらスペイン映画なのか。『アラトリステ』といい、最近はスペインの史劇が元気なのかしら。面白かったです。『背教者ユリアヌス』に萌えたりする末期ローマ好きは是非どうぞどうぞ。あと次は『英国王のスピーチ』に行って、今週末からは『イリュージョニスト』だ!
 予告編についているコメントを見てちょっと補足。この映画はキリスト教批判映画ではないでしょう。もっと普遍的な、留まることができない非寛容への警告ではないかと。

オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (新潮クレスト・ブックス)

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