『ロビン・フッド』
話はなんとも凡庸でした。とはいえリドリー・スコットならではの湿り気のある風景、たくさんの騎士、そして実に素晴らしい旗! 旗! 旗! マント! ……が観れたので映画代の元は取れましたよ。リドスコってひるがえる旗やマントによほどの思い入れがあるようで、そういったものを撮らせると本当にうっとりする絵を見せてくれるのです。僕がそれに気づいたのは『1492 コロンブス』のときでした。あと、史実っぽく見せた大ウソ絵が好きですねこの人。さすがに今回の「中世上陸用舟艇」はそれっぽくないかな! それだけに気になるところもありまして、あれだけの騎士が出てくるのに槍で突撃しないのは寂しいのです。みんな抜刀突撃。『グラディエーター』でもローマ軍団が槍投げなかったのでションボリしたしなぁ……僕がこの辺狭量というのもあるのでしょうけど、画竜点睛を欠くといいますか要所要所でリドスコとは趣味が合わないのかもしれません。でもその欠点を超えて旗が素晴らしいから良し! 冒頭の城攻めシーンも楽しかったですよ。以下細かいこと。「ER」アーチー役の役者さんが出ていて、アーチー好きの僕はちょっと嬉しかったのです。アーチーにしか観えなかったけど。もうひとつ、悪役さんの人相風体が『ダンジョン&ドラゴン』のダモダー様に酷似していていつ魔法を使い出すかとドキドキしていたのでした。ああ、ジョン王の描写がたいへん愉快だったことも付け加えておきましょう。
- 騎士の突撃について印象論なのですが、ハリウッド映画の騎士は抜刀突撃が多い気がします。僕は騎士・騎兵でもっとも格好いいのはランスチャージだと信じておりまして、『アレクサンドル・ネフスキー』のチュートン騎士団突撃のシーンを越えるものが未だに無いのはいささか寂しいところですね。あと『ワーテルロー』のポーランド槍騎兵の突撃も良かったな! 穂先を揃えた集団突撃!
- あ、これは史実がどうとかいう問題ではありませんので念のため。『アレクサンドル・ネフスキー』のチュートン騎士団なんてファンタジーそのものですからね。あれはエイゼンシュテインがノリノリでハッタリかましているのです。
- で、大抵の映画で抜刀突撃ばかりなのはおそらく軍勢同士が乱戦になってからの描写に関わってくるからではないでしょうか。敵味方が馬上で剣を振るうというのは絵になるのですね。長い槍だと、どうしても乱戦になってからはモタモタして見えてしまいます(『アレクサンドル〜』もそうでした)。殺陣もやりにくい気がします。つまり乱戦がない話だとランスチャージを見せることができるわけで、それが『ロック・ユー!』のような作品になるのでしょう。大好きだ!
- というわけで、地響きを蹴立てて騎士・騎兵の軍勢がランスチャージする絵がもっと観たいよというお話でした。甲冑に身を固めたピストル騎兵が隊列組んで撃ってくる絵も観たいよ観たいよ。
『匪賊の社会史』(エリック・ホブズボーム)
『江戸の検屍官』(高瀬理恵・川田 弥一郎)
『表具屋夫婦事件帖』(高瀬理恵)
『モトリョ。』(幌倉 さと)
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