『空中軍艦大和1944』(桂令夫

 桂さんの新作小説です。仮想戦記かと思って見逃すのは勿体ない怪作ですぞ。かつてのポプラ社あたりのジュブナイル小説のふりをした、素晴らしい与太話です。小学校の図書室の香りがします。ちょっと冒頭を引用してみますと

「あっ、これはどうしたことだ!」
 白瀬堅一郎技術大尉は、思わず、そうさけんだ。
 呉海軍工廠(海軍でつかうための軍艦をつくるところ)での、たいへんいそがしい仕事をおえて、秋の夜汽車にゆられていたところだった。

 とまぁ、万事こんな調子です。登場人物紹介ひとつとっても「スプルアンス提督…米海軍の提督のひとり。ずるがしこく、ゆだんのならない人物(後略)」といった具合。これをおおいに楽しめる人はそれなりにいるでしょうけど、そういう読者に届くかどうか不安でなりません。表紙デザインといい帯といい、もっとこの芸風に沿ったものにすれば良かったのに。あ、僕はゲラゲラ笑いながら読みました。このblogに来てくれている人なら多分大丈夫じゃないかしら。あと青島文化教材社に思い入れのある人はなにがなんでも。

『Comic 1984

空中軍艦大和1944 (AXIS LABEL)

空中軍艦大和1944 (AXIS LABEL)

COMIC 1984

COMIC 1984