第9地区

 南アフリカヨハネスブルク上空に異星人の母船が居座り、難民となった「エビ」と呼ばれる異星人たちの隔離地区が地上に作られ……という物語。SFは絵だ、を地で行くような、エビたちが住むスラムを見せつける説得力。タチの悪さと真面目さが入り交じった傑作でした。もともとゲーム「HALO」の映画化を進めていたのがポシャったので、その成果を活かしつつ撮られた作品なのだそうです。おそらくそういう背景があったから脚本がかなり自由に作れたのではないでしょうか。実にハリウッドらしくない話なのですね。あとデートで観るにはきわめて不適ですのでご注意ください。主人公がクリストファーに「俺の気が変わらないうちに早く行け」と叫んで戦いに赴く場面は、ボンクラなダメ人間が最高に輝く瞬間だなぁ。男の子がつい言ってしまう瞬間。涙が出るよ。難をいうなら、脚本がちょっと粗くて主人公が度を越して馬鹿に見える瞬間があることかしら。とはいえそんなのを覆う出来だったので無問題です。

『アイガー北壁』

 1936年、ナチ政権下のドイツからアイガー北壁の初登頂を目指した二人の登山家の物語。傑作でした。観ていて辛くなるマゾ映画(山岳映画とはそういうものです)。ドイツらしい丁寧な作りだったのが印象的。『劔岳』から約30年後の物語ですね。山には素人の僕でも、当時の登山装備が簡素なのには驚きます。ハーケンも自分で作っていたのね……。それにしても『北壁の死闘』を読み返したくなりましたよ。『第9地区』は評判なので勧めなくても皆さん行きそうなので、僕は『アイガー北壁』を推すことにします。マスト行くべし。でも、あの女記者は余計かなぁ、特に終盤はね!

『鎧光赫赫』(久慈光久

 『狼の口 ヴォルフスムント』で度肝を抜いてくれた久慈光久さんの作品集。やっぱり読み応え充分です。この人の絵は描線が太くて勢いがあって、一方でなかなかはじけさせてくれずにジリジリと押し殺したような話を見せてくれるのです。日本の戦国時代や中世ヨーロッパ、あと銃がお好きというなんだか嬉しくなるような趣味の方で、一度是非お会いしたいなぁ! 『狼の口』ともどもお勧めです。前者は今年一番ぶったまげた作品かも。マスト読むべし!

『PIECES 2』(士郎正宗

鎧光赫赫 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

鎧光赫赫 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX)

WORLD WAR Z

WORLD WAR Z

PIECES 2 PhantomCats

PIECES 2 PhantomCats